2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13873001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西部 忠 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (50261269)
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Keywords | 進化 / 操作主義 / 構築主義 / 貨幣 / 制度 / 慣習 / 市場 / 地域通貨 |
Research Abstract |
進化経済学における「進化」概念は,非完結的,系統発生論的なものであり,そこで問題とされる社会進化論は,「多層的実在主義」を存在論的な了解とする「ラマルク=ダーウィン主義」的なものである。「進化」は,経済という実在の特性であるだけではなく,それを対象として構成・理解しようとする経済学という言説体系の特性でもある。理論は現実を単に記述ないし説明するだけではなく,現実を構成している。それゆえ,経済学的言説におけるレトリックは大きな意味を持つ。シミュレーションはアナロジーやアブダクションにより理解された非現実的実在の構造やパターンをコンピュータの高速演算能力を利用することで人工的に構築し,対象の理解するための一手法であり,それは,現実を経験的に「記述」するのではなく,それを隠喩的に「説明」するのである。 進化経済学は,操作主義や構築主義とは異なる,進化主義に基づき新たな制度設計を提案する。進化主義は,ミクロ的・マクロ的な経済パラメータの調整ではなく,媒体の制度設計自身を重要な実践的・政策的課題として認識するのである。それは,経済主体と経済システムの中間に位置する制度や慣習が枢要な役割を果たしていること,なかでも,「貨幣」のシステム的・情報的・認知的な諸特性に着目する。貨幣はさまざまな機能を果たすが,われわれは,デザインという観点から,貨幣を,あらゆる商品の経済的価値を一元的に表現することで,初めて市場というネットワークを作り出す独立の情報媒体(メディア)であるとみなす。現行の貨幣が持つ分散的システム形成という意義を積極的に認めながら,その欠陥を内在的に除去しうるような貨幣制度を意識的に導入することで,経済主体の内的特性と経済システムの全般的特性を内部から変容・進化させることができる。地域通貸の意義はこうした進化主義的な制度・政策観から理解されるのである。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 西部忠: "分業の動態的メカニズム-スミス『国富論』冒頭4章の再検討"伊藤誠編 『資本主義経済の機構と変動』. 37-70 (2001)
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[Publications] 西部忠: "地域通貨から進化主義的制度設計を考える"v. 3. 37-47 (2001)
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[Publications] 西部忠: "LETS論"『批評空間』(株)批評空間. III.1. 27-52 (2001)
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[Publications] 西部忠: "貨幣の進化とデザイン"『進化経済学論集』. 6. (2002)
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[Publications] 西部忠編・監修: "豊かなコミュニティづくりを目指す地域通貨の可能性"北海道自治政策研修センター政策研究室. 130 (2001)