2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13875046
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10101776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 満里子 慶應義塾大学, 名誉教授 (00051368)
岡 浩太郎 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (10276412)
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Keywords | 脳科学 / 酸素輸送 / 微小循環 / バイオメカニクス / 微小酸素電極 / 脳内酸素環境 |
Research Abstract |
脳は絶えず大量の酸素を消費し、その正常な機能は絶え間ない酸素供給に大きく依存している。したがって脳における酸素輸送を明確にすることは、生命活動の根源にかかわり重要な意味をもつ。酸素輸送の主要なパラメータの一つとして組織酸素分圧がある。脳組織における酸素分圧は、これまでに動物の大脳皮質を対象とした微小酸素電極法によって、測定部位ごとに多様な分布を示し空間的に不均質であることが示されている。さらに我々は脳の構造的特徴である機能領野に着目し、ラット体性感覚野における酸素分布を詳細に調べた結果、大脳皮質の機能領野において特徴的な酸素の分布パターンがあることを見出した。しかしこれらの酸素分布が機能領野のどのような構造に起因しているのかは、未だ明らかでない。 本研究では、酸素消費の場である細胞と酸素供給を担う血管の両者の分布を調べ、機能領野の構造を定量的に明らかにすることを試みた。さらに細胞、血管、酸素の三者の分布から、機能領野に特徴的な酸素の分布パターンが機能領野の構造とどのように関係しているのか検討した。特に全機能領野における血管分布と細胞分布の関係に関しては以下のような結果を得た。第I層を除いて細胞数はほとんど変化しないが、それに比べて血管数の変化が大きいことがわかった。特に神経活動において重要な第III-V層において血管が多く分布していることもわかった。それに対して、第II層のように細胞数が多いにもかかわらず、血管が少ないことがわかった。血管分布と酸素分圧の関係に関しては、表層部(第I-II層)では深さとともに酸素分圧は急速に減少するのに対して血管数は急速に増加していることがわかった。また中層部(第III-V層)では血管分布も多く酸素分圧も高かった。しかし深層部(第VI層)では深さとともに血管数は緩やかに減少するのに対し、酸素分圧は緩やかに増加するという一見、相反する結果を得た。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 谷下一夫他: "ラット体性感覚野における機械刺激後の深さ方向局所酸素分圧変化"The Japanese Journal of Physiology. 51巻SUP号. (2001)
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[Publications] 谷下一夫他: "刺激負荷に続くラット大脳皮質における局所酸素分圧変化"医用電子と生体工学. 39巻特別号. 672 (2001)
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[Publications] 谷下一夫他: "Heterogeneous oxygen environment in the rat somatosensory cortex"The 4th International Conference on Biological Physics. 72 (2001)
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[Publications] 谷下一夫他: "ラット大脳皮質における脳微小血管網と組織酸素分圧"第14回バイオエンジニアリング講演会(BE2002)講演論文集. 131-132 (2002)
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[Publications] 谷下一夫他: "脳腑活後の局所酸素分圧変化とその空間分布パターンについて"医用電子と生体工学. (発表予定). (2002)