Research Abstract |
仮想現実感技術の進展に伴い,3次元形状をいかに提示するかという研究が進められている.一般的な例として,HMDを用いて左右眼に視差のある画像を与え,その両眼視差により奥行き感を知覚させる方法がある.しかし,この方法では頭部に装着した装置の重量や,輻輳調節矛盾という現象により利用者に多大な疲労を与えてしまうことが問題となっている.そこで本研究では新しい視覚提示法として,視覚の時間的応答特性を利用した3次元図形描画法を提案する.光源の高速運動により発生する残像現象を用いて図形を描くことを基礎原理として,パラレルワイヤ駆動方式による高速運動制御を実現するためのシステムを構築し,図形描画装置としての評価を行った. H13年度は円や正方形の描画を実現したが,光源速度の限界により立体形状を描くことはできなかった.そこで,H14年度は高速な運動が可能な装置の試作と,それによる四面体図形の描画を目標に研究を行った. より単純な構造を取る為にパラレルワイヤ駆動装置は,3自由度機構とした.提示領域は,1辺,約400[mm]の四面体とした.描画においては,光源の最大加速度が重要な因子となるため,描画目標の形状から,必要な光源加速度を計算し,その加速度を実現するモータの選定とプーリ径の決定法を確立した.この場合,光源を駆動させるワイヤの最大加速度は,プーリ径により変化し,その最大化加速度はあるプーリ径で極大値を示すことが分かった.極大値を示す,プーリ径を用いてプーリを設計する方法を提案した.次に,このようにして設計したモータとプーリの組み合わせにより,目標の加速度が得られているかどうかを確認するために,閉ループ系の周波数応答実験を行った.実験結果より,当初の目標加速度が得られていることが分かった. 試作した3自由度パラレルワイヤ駆動システムを用いて,描画実験を行った.その結果,目標とした1辺10[mm]の四面体を描画できることが分かった.10[Hz]の周波数で,この四面体図形を描画し,良好な結果が得られた. 以上により,視覚提示装置としての本システムの有用性を示すことができたと言える.一方,鋭敏な角を持つような図形の場合には,大きな加速度が必要となり,鋭敏な角のない形状の方が提示しやすいことが分かった.
|