2001 Fiscal Year Annual Research Report
人類の材料文明を解き明かす金属古文化財のナノ物性評価
Project/Area Number |
13875113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
北田 正弘 東京芸術大学, 美術研究科, 教授 (70293032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 泰孝 東北大学, 工学研究科, 教授 (90005413)
桐野 文良 東京芸術大学, 美術研究科, 助教授 (10334484)
宮田 亮平 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (00174194)
紀平 寛 新日本製鉄(株), 技術本部・主任研究員
沖 憲典 九州大学, 総合理工学研究院, 名誉教授 (70037860)
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Keywords | 金属文化財 / 日本刀 / 江戸時代 / ラス構造 / 転位 / 中炭素鋼 / ガラス / チタン化合物 |
Research Abstract |
わが国の金属文化財の代表である日本刀の金属組織およびナノ構造について検討した。研究に用いた日本刀は元禄時代、筑紫(現在の福岡)の刀鍛冶である信國吉包作の脇差しである。この作者は江戸中期の上作と評価されている鍛冶匠である。これを対象に選んだのは、美術刀として作刀技術が確立した時期の刀であるためである。全長は約60cm、最大厚さ6mm、最大高さ35mmある。先ず、刀の断面および側面についての金属組織を観察し、次に断面を透過電子顕微鏡および走査型電子顕微敏鏡およびX線スペクトロスコピーにより調べた。得られた結果はを以下にまとめる。先端の刃先近傍の炭素量は0.6〜0.65%で、組成的には中炭素鋼である。先端の極く近くは焼き入れによって生じたマルテンサイト組織になっており、典型的なラス構造を示す。ラスの中の結晶には高密度の転位が存在し、双晶は見られない。ただし、複数の格子の重なりによるモワレ像などが存在し、更なるナノスケールの下部構造がある。したがって、強化の機構は高密度の転位とこれらの転位を固着する炭素原子によるものと考えられる。焼き入れ時のマルチンサイト発生温度(Ms点)は比較的高いものとみなされる。折り返し鍛錬された日本刀には酸化物が來雑物として見出されるが、本試料ではSi、Ca等を主成分とするガラス質のものに付随して、Tiを主成分とする結晶性酸化物が見出された。ガラスの中に分散する当酸化物は六角形を呈し、稠密な格子構造をもっている。この化合物の格子像は長周期構造を示し、副格子あるいは規則格子の存在が推定される。
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Research Products
(1 results)