2001 Fiscal Year Annual Research Report
微量元素―原子空孔複合体の形成に基づく合金の新しいクリープ変形抑制メカニズム
Project/Area Number |
13875131
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森永 正彦 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50126950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 泰治 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20154354)
村田 純教 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (10144213)
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Keywords | 原子空孔 / 高温クリープ / 陽電子消滅 / 高クロム・フェライト鋼 / ホウ素 / 合金設計 |
Research Abstract |
本研究は、実用合金学の世界に"原子空孔(Vacancy)"の考え方を導入するための萌芽研究である。純金属では原子空孔が原子拡散に不可欠であることは良く認識されているが、実用合金の世界では原子空孔の役割について、ほとんど論じられていないのが現状である。原子拡散が重要である高温クリープ変形の場合でも、原子空孔及びその平衡濃度が重要であるにもかかわらず、転位と析出物の相互作用のみに議論が集中している。最近の研究から、高クロム・フェライト系耐熱鋼に硼素(B)及び窒素(N)を100-200ppm添加すると、650℃クリープ強度が著しく増加することが分かっている。その理由は不明であるが、ppm程度の微量元素が有効である理由として、ppmオーダーの原子空孔と複合体を作り、それがかなり高温まで安定であるため、有効原子空孔濃度が低下し、クリープ変形抵抗が増加したと考えることが最も妥当であるように思われる。 この考え方を実証するため、本研究では、高純度鉄及びFe-100ppmB,Fe-100ppmB-200ppmNのモデル合金を作り、B、Nと原子空孔の複合体の形成とその安定性を陽電子消滅法で調べた。まず、バンデグラフ加速器を用いて、電子線照射(照射量:約8x10^<17>e/cm^2)を行い、空孔量を増やし、陽電子実験の感度を上げた。その後、各合金試料を室温から700℃まで50℃刻みで上げながら、陽電子寿命を測定し空孔の回復過程を調べた。その結果、予想どおり、B、N添加合金は高純度鉄に比べ、空孔の回復が遅れ、複合体が高温(例:B添加合金では約600℃)まで安定に存在しうることが分かった。本研究により、原子空孔を考慮した高温材料の合金設計への道が新しく拓けようとしている。
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