2001 Fiscal Year Annual Research Report
分子内酸・塩基点分離型動的キラリティーセンシング素子の開発と利用
Project/Area Number |
13875173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲永 純二 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 教授 (50091244)
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Keywords | キラルビナフチルリン酸 / NMRシフト試薬 / 不斉認識 / キラルアルコール / キラルスルホキシド / キラルアミン / キラリティーセンシング |
Research Abstract |
強い酸点と弱い塩基点を不斉空間の一定位置に固定することにより、基質の化学修飾をいっさい行うことなく動的な不斉認識を可能とする新しいキラリティーセンシング素子の開発を目指して、まず、軸不斉を有する1,1'-ビナフチル-2,2'-ジイルリン酸エステルの3,3'-位に大きなπ電子平面をもつ化合物を設計し、これを市販の光学活性ビナフトールから6段階で収率よく合成した。合成した3種の化合物はいずれも一般有機溶媒によく溶けることがわかった。そこで、これらの不斉認識能を評価する目的で、NMRのシフト試薬として用いたところ、少量の添加でアルコールやスルホキシドなどの中性キラル分子、ならびに、より塩基性の強いアミン類のニナンチオマーの動的識別に極めて有効であることが明らかとなった。例えば、アントリル基を有するキラルリン酸は2-ブタノールのメチル基とエチル基の違いを完全に見分けることができ、また、m-ターフェニル基を有するキラルリン酸は僅か0.1当量の添加で2-ブチルアミンのエナンチオマーを完全に分離することが判った。さらに、アントリルエチニル基を有するキラルリン酸は相互作用点が不斉点から離れたところにある2-メチルペンチルアミンのニナンチオマーも効率よく識別できることを見出した。 新しく開発されたシフト化剤の特長は以下のようにまとめられる。(1)基質を化学誘導することなく直接エナンチオマー比の分析ができる。(2)弱塩基性物質への適用が可能である。(3)シフト化剤は芳香族プロトンしかもたず基質を高磁場シフトさせるのでNMRの観測可能範囲が広く基質の適用範囲も広い。(4)汎用NMR溶媒である重クロロホルムや重ベンゼンなどが使用でき、測定後、基質、シフト化剤ともに定量的に回収することができる。また、シフト化剤は何度も再使用可能である。
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