2002 Fiscal Year Annual Research Report
曲がった構造を有するヘテロ芳香族化合物の開発と機能探索
Project/Area Number |
13875178
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大坪 徹夫 広島大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80029884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧宮 和男 広島大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40263735)
安蘇 芳雄 広島大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60151065)
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Keywords | 複素環化合物 / ボール型分子 / 結晶構造 / 自発分極 / 焦電性 |
Research Abstract |
芳香族炭化水素の一つであるコロネンは平面で、極めて対称性が高いことより、電子構造に非常に興味がもたれている。本研究では、ヘテロ原子の強い相互作用のため機能性が高まると期待されるコロネンのヘテロ類縁体に着目し、トリフェニレノトリチオフェンの合成を行った。この化合物の分子構造をX線構造解析で明らかにしたところ、驚いたことにボール型の構造をしており、フラーレンの曲面に近い構造をしていることが分かった。さらに、興味深いことに、この結晶構造は曲がったパイ系が凹凸相互作用で一方向に積み重なっており、結晶構造に反転対称が存在しないことが分かった。このことは結晶自身に自発分極が存在することを意味する。そのような分極結晶は焦電性や圧電性を示す可能性がある。そこで、この単結晶の焦電性の測定を検討した。雲母基盤上に単結晶を置き、金電極を取り付けて、20℃から50℃の温度変化に対応して発生する電極両端の電位差を測定した。その結果、1℃あたり0.1mVの電位が発生し、この値から焦電係数が17μCm^<-2>K^<-1>であると分かった。この値は標準的な有機焦電材料であるメタニトロアニリンの焦電係数9μCm^<-2>K^<-1>と比べてもかなり大きく、トリフェニレノトリチオフェンが優秀な焦電材料であることが明らかとなった。トリフェニレノトリチオフェンの縮合環の拡張体はより曲面が大きい分子を生じると期待され、このことより、さらに大きな自発分極を示す可能性がある。そごで、トリフェニレノトリチオフェンのトリベンゾ誘導体に研究対象を拡げ、その合成に成功し、構造解析や物性を検討中である。トリフェニレノトリチオフェンの大きな焦電性の発見はインパクトを与えると期待され、その結果の論文を作成中である。
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