2003 Fiscal Year Annual Research Report
花色の多様発現機構の解明―特に構造色の関与について
Project/Area Number |
13876005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 孝洋 京都大学, 農学研究科, 助教授 (40173009)
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Keywords | 花色 / 花弁 / 質感 / 分光反射 / バラ / カーネーション / 表皮細胞 / 微細構造 |
Research Abstract |
色素による色調だけでなく,今後は質感をともなう多様な花色育種が重要になると考えられる.萌芽研究の最終年度として,花弁の質感について,その多様な肇現機構を光学的に明らかにしようとした. 1.カラーレーザー顕微鏡を用いて,数種の花卉の花弁や苞葉の表皮細胞表面を観察した.表皮細胞は,筋状微細構造(striation)を持つものと持たないものに分けられた.微細構造の形状(細胞表面の模様)は種により多様であったが,大きさはいずれも1μm以上あり,可視光の反射・屈折に影響することが分かった. 2.花弁の色調や質感は花弁からの分光反射によって決まる.筋状微細構造が分光反射に及ぼす影響を定量するため,Venableの方法により,花弁の変角分光反射強度を測定した.材料には表皮細胞の形状が乳頭状で似ているバラとカーネーションを用いた.バラには筋状微細構造があり,カーネーションにはない.分光反射強度には含有色素の量が大きく影響するので,バラ,カーネーションそれぞれについて色の濃さの違う品種を集め,可能な限り筋状微細構造以外の条件を揃えて実験を行った.その結果,筋状微細構造は変角分光反射強度に大きく影響することが明らかになった.筋状微細構造は花弁内への光の取り込み量を増やし,また,表皮細胞表面での光の散乱に影響すると考えられた. 3.花弁表皮細胞の形状には,大きく分けて,平面状,レンズ状,乳頭状,円錐状のものがある.この形状の種類だけでは質感の多様な発現は起こり得ないが,種によっては,これに筋状微細構造が加わることにより,見る角度によって色・艶が微妙に変わる質感が生じるものと考えられた. 4.花弁の質感はマクロな花弁表皮細胞の形状とミクロな筋状微細構造によって多様化していることが分かった.形質転換も含め,今後の育種目標として,花弁表皮細胞の形状と筋状微細構造の改変が新たな質感育種には重要であることが示唆された.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 林 孝洋, 小山由利子, 矢澤 進: "花弁表皮細胞の形状と細胞表面の筋状微細構造が花弁の質感に影響する"園芸学会雑誌. 72巻・別冊1. 301 (2003)
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[Publications] 林 孝洋, 小山由利子, 矢澤 進: "花弁表皮細胞の微細構造が花弁の反射光に及ぼす影響"園芸学会雑誌. 73巻・別冊1(発表予定). (2004)