2001 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫のギャップ結合の機能解析と新規害虫防除法への応用
Project/Area Number |
13876011
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
遠藤 泰久 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (50176806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 亮一 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (30314298)
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Keywords | 昆虫 / 消化管 / 害虫防除 / ギャップ結合 / イネキシン |
Research Abstract |
昆虫の消化管筋組織に対する神経支配の解明は、系統発生学的見地からだけでなく特異な神経-筋情報伝達系を標的とした害虫防除法の開発という側面からも重要であり興味深い。我々は昆虫消化管筋層において、運動神経終末が主に消化管筋層外側に分布することを免疫組織化学法および光学・電子顕微鏡観察により明らかにし、その収縮刺激が管腔内側の筋へ伝えられるための機構として一種のギャップ結合(gap junction)が筋細胞間に存在することを、通常電顕法による微細構造の観察と、ギャップ結合を介して隣接細胞の細胞質内に拡散可能な蛍光色素Lucifer Yellowの細胞内微小注入法により証明した。以上は第24回日本神経科学・第44回日本神経化学合同大会(2001年9月26日〜28日、京都)にて発表した。 ギャップ結合は、電気的・化学的および物理的に二つの細胞を連結するチャネルで、細胞間情報伝達に重要な役割を果たす。無脊椎動物においてギャップ結合チャンネル複合体を形成するとされる蛋白質イネキシンは現在までにCaenorhabditis elegansで25種、Drosophila melanogasterで4種、Schistocerca americanaで2種、Bombyx moriで1種がそれぞれ同定されたが、脊椎動物のギャップ結合関連蛋白質コネキシンとの間にアミノ酸配列の相同性はほとんど認められない。我々はさらに昆虫におけるギャップ結合の局在と機能の詳細を明らかにするために、イネキシン蛋白質に対する特異的抗体を作成することを試みた。GenBankより得られたカイコinnexin2のアミノ末端側断片(Bm-Inx2,AU003649)と、SilkBaseより見いだされたinnexin2のホモログと思われるカイコの遺伝子断片(tesV0314,P33085)により、ほぼ全長(約1400bp)のカイコinnexin2 cDNAの塩基配列を得た。RT-PCR解析により、カイコ休眠卵の浸酸処理直後には、innexin2 mRNAは既に高いレベルで発現しており、成虫触覚においても強い発現が認められた。この遺伝子配列を元にカルボキシル末端側の細胞内領域を含む約60アミノ酸残基の部位を、発現ベクターpET32b(+)に組み込み、チオレドキシンとの融合蛋白として大腸菌にて発現させた。今後は、精製蛋白質をマウスに免疫して特異的抗体を作製し、昆虫におけるイネキンン蛋白の局在について組織・細胞レベルで詳細に検討する。以上第46回日本応用動物昆虫学会大会(2002年3月28日〜30日、東京)にて発表予定。
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