2001 Fiscal Year Annual Research Report
バンブーボーラー休眠幼虫から見い出された油貯蔵をする新器官の機能探索
Project/Area Number |
13876013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
桜井 勝 金沢大学, 理学部, 教授 (80143874)
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Keywords | Omphisa / 幼虫休眠 / 脂肪酸エステル / 熱帯昆虫 |
Research Abstract |
タイの北部に生息する鱗翅目Omphisa fuscidentalis(通称タケノメイガ)の幼虫は、9月に老熟幼虫となり、竹の節間内で次の年の6月まで、9ヵ月の幼虫休眠をする。この幼虫体内に、これまで記載されていない管状組織を見出した。この組織は大顎付近に始まり、体長のほぼ7割くらいの長さまではかなり太い管(直径が絹糸腺の1.5倍くらい)を構成し、それ以後は急激に細くなって盲管となって終わり、全長は体長の2倍に及ぶ。本組織は一層の細胞層からなり、中に液状油脂を蓄積しているため、これを仮に油腺(oil gland)とよぶ。油腺の内容物の組成を化学分析した結果、側鎖のある脂肪酸エステルであった。数種の類似エステルからなり、これらは全て新規天然化合物であった。本種幼虫は竹の節間内で9ヵ月の幼虫休眠をする。内部は通常カビ等の侵されていないが、採取し竹を開くとまもなくカビが生えてくることが観察できた。そのため内容物の機能を調べるため、現地のカビ数種類に対する抗カビ活性を調べたが、顕著な抗カビ活性は認められなかった。しかし、1種類のカビの広がる速度は鈍った。このカビを指標として、実験系を検討し、より広範なカビ或いは細菌に対する活性を調査する予定である。一方、油腺につてい組織学的検討をした結果、不定六角形の細胞からなり、核は枝状に広がり、蛹化後に予定細胞死を起こした。細胞形態や細胞死などから、この腺は絹糸腺と非常に近い組織であると考えられた。これまで動物界で液状の油脂を蓄える組織が報告されている例は極僅かである。タケノメイガの油腺はこの点から見てもとてもユニークな研究対象であり、その機能解析はとても興味深い課題である。
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Research Products
(1 results)