2001 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト生殖毒性および次世代影響のバイオマーカーとしての神経内分泌動態の有効性
Project/Area Number |
13877057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岸 玲子 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80112449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐田 文宏 北海道大学, 大学院・医学研究科, 講師 (90187154)
小橋 元 北海道大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60270782)
本間 研一 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (40113625)
石塚 真由美 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助手 (50332474)
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Keywords | スチレン / 内分泌動態 / プロラクチン / 黄体形成ホルモン / 成長ホルモン / 甲状腺ホルモン / ELISA |
Research Abstract |
〔目的〕近年、内分泌攪乱物質に関する問題が重要視され、スチレン、2-ブロモプロパン等の有機溶剤曝露労働者では無月経、不正月経周期、不正出血、受精率の減少が報告されている。その作用機序を解明するために、内分泌攪乱物質も含めた環境化学物質曝露による神経内分泌物質の動態と、生殖毒性の発現について知見を得ることを目的とした。 〔方法〕産業分野での用途の広さ、また日常的にも食品容器としての使用料の多さに伴い、取り扱い作業者の数も多いことから、内分泌攪乱作用の疑いもある有機溶剤スチレンモノマーを使用した。動物実験で8週令ラット(雌雄)をスチレンモノマー吸入曝露と皮下投与群とを使用した。血漿中のプロラクチン(PRL)、成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルを、酵素結合免疫測定法(ELISA, enzyme-linked immunosorbent assay)で検討した。 〔結果と考察〕吸入曝露群(雄)ではTSHレベルが有意に増加した。一方、雌ではPRLレベルが有意に増加していた。しかし、皮下投与群(雄)ではTSHレベルが有意に減少していた。皮下投与(雌)では成長ホルモンに差が見られた。スチレンはTSH、プロラクチンレベルを上昇させ、雌雄ともにLHに作用することが考えられる。スチレンを曝露された労働者では、プロラクチンレベルが有意に増加していたとの報告もある。動物実験においても雌の吸入曝露群で100ppm、2週間曝露という短期間でもプロラクチンレベルが増加していたことから、疫学的報告を裏付ける結果を得た。しかし、雄では雌とは異なる傾向であった。基礎的なスチレン代謝酵素活性の雌雄差の検討を行ったところ、スチレンモノマーに対する代謝酵素活性は成熟ラットでは雌雄による性差が見られた。今回の内分泌動態変化、薬物代謝酵素活性の変動についての実験から次世代影響を引き起こす要因となるメカニズムについての一端ともなる雌雄差について明らかにした。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 梅村朋弘, 倉橋典絵, 近藤朋子, 片倉洋子, 岸玲子 他: "スチレン曝露による内分泌動態への影響"日本内分泌攪乱化学物質学会第4回研究発表会要旨集. 339 (2001)