2002 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞膜における薬物輸送システムの解明は新たな化学療法開発に道を開く
Project/Area Number |
13877194
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
椎葉 健一 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90196345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 高明 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (80292209)
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Keywords | 有機カチオン / トランスポーター / アドリアマシン / 抗癌剤感受性 |
Research Abstract |
本研究は、新規有機カチオントランスポーターorganic cation transporter (OCT)に特異的に輸送される抗癌剤の同定と薬理学的解析、癌組織における発現の解明、トランスポーター発現癌細胞の抗癌剤に対する感受性の分析を行うことを目標としている。研究の結果我々は、癌細胞に発現し、抗癌剤アドリアマシン(ADM)を細胞内に取り込む全く新しいOCTを単離した。抗癌剤を輸送するOCTの報告はこれまで他にない。平成13年度内には、我々が単離したこのorganic cation/adriamycin transporter 1(OCA1)が肝癌、大腸癌、膵癌等の癌細胞株で発現し、ADMを濃度依存的かつ飽和的に輸送(Km;5.23±0.4μM)することを明らかにした。発現は特に、HuH-7(肝細胞癌)、CloneA(大腸癌)及びCOL0 320DM(大腸癌)で著明であった。臨床検体においても、肝細胞癌2例、大腸癌1例及び直腸癌1例で、同症例正常部よりも癌部で有意に強く発現していることを明らかにした。 平成14年度の研究実施計画は、OCA1に特異的な抗癌剤に対する、各種癌細胞株の感受性を調べることである。HuH-7のADMに対する感受性を、MTT assayにて検討した結果IC50は1.76±0.21μMであった。OCA1の基質の一つであるTEAを競合的阻害剤として加えた場合、IC50は4.94±0.44μへと変化した。これは、ADMの殺細胞効果が抑制されたことを意味し、OCA1がADM感受性を決定している可能性を示している。OCA1の詳細の解明とともに、抗癌剤の取り込みに関与する他の分子を明らかにすることは、新たな抗癌剤治療法開発に道を開くものと考えられた。
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