2001 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタグランジンD合成酵素の変性剤による準安定状態の解明
Project/Area Number |
13877367
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大久保 忠恭 大阪大学, 薬学研究科, 助教授 (90272997)
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Keywords | リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素 / NMR / レチノイン酸結合 / ^<15>N核の緩和時間 / 結合エントロピー |
Research Abstract |
アミノ酸167残基のマウス由来リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)は哺乳動物の中枢神経系に多く発現し、脳内でPGH_2から睡眠誘発に関与するPGD_2への異性化反応を触媒している。さらに、アミノ酸配列の相同性からL-PGDSはリポカリン・ファミリーに属しており、脳内でのレチノイド等の疎水性低分子の輸送タンパク質としての性質も兼ね備えていると考えられている。このようにL-PGDSは脳内活動の制御に深く関与しており、副作用のない新たな睡眠薬等の開発のキーとなると期待されている。そこで我々は、L-PGDSと疎水性低分子との結合様式を原子レベルで解明するために、NMRを用いて立体構造決定及び運動性の解析を行った。 【実験・結果】大腸菌を用いた大量発現系を構築し、^<13>C,^<15>NラベルしたL-PGDSを調製した。各種2次元、及び3次元NMRスペクトルの測定及び解析によりシグナルの連鎖帰属を行った。^<13>C2次化学シフトの値から2次構造の同定を行い、約1300個のNOEを用いて立体構造決定を行った。L-PGDSはリポカリン・ファミリーに特有の8本のβストランドよりなるβバレル構造を形成しており、バレルの外側側面に1個の長いαヘリックスが位置していた。L-PGDS-レチノイン酸複合体及びL-PGDSの^<15>N-^1'H HSQCスペクトルの比較からレチノイン酸結合部位を同定した。^<15>N核の緩和時間の解析を行い、レチノイン酸結合に際しての主鎖の運動性の変化を調べた結果も併せて報告する。運動性の指標であるオーダーパラメーターをLipari-Szaboのモデルフリー解析法を用いて計算した結果、レチノイン酸が結合していない状態では分子全体で揺らぎの少ないコンパクトな立体構造をとっていることが明らかとなった。しかし、L-PGDS-レチノイン酸複合体では、N末側60残基の領域の運動性が上昇していた。C末側の主鎖の運動性はレチノイン酸の有無に関わらずあまり変化していなかった。運動性の上昇はエントロピー的に複合体の安定化に寄与すると考えられる。基質の結合に伴い立体構造の揺らぎが増加している例はあまり報告されておらず、今回の結果は疎水性低分子の結合ではエントロピーの効果が大きいことを示している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Yoshida, et al.: "Solution structure of the ribosome recycling factor from Aquifex aeolicus"Biochemistry. 40. 2387-2396 (2001)
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[Publications] H.Nakano, et al.: "Crystallization and preliminary X-ray crystallographic studies of a mutant of ribosome recycling factor from Escherichia coli Arg132GIy"Acta Crystallogr. D. 58. 124-126 (2002)