Research Abstract |
法医解剖において死因解明や診断の精度を向上させ,死亡者の生前の病態を解明するためには,法医解剖時に採取,保存している臓器,組織などを研究に使用することは不可欠である.又,大学で法医解剖を行っている意義のひとつは法医解剖の症例を医学教育に使用することにある.このような摘出臓器,組織などの教育,研究への使用に関して,最近,大学や学会等で倫理的,社会的問題をクリアすべく検討されている.しかしながら,この問題に関する遺族の意識調査はこれまで行われていない.そこで,死亡者の遺族を対象に,臓器の保存,教育,研究への使用,承諾の取得方法などに関する意識調査を行い,その結果を倫理規範作成に反映させる必要がある.今回の目的は,東京慈恵会医科大学法医学教室で法医解剖された死亡者の遺族に対し,摘出臓器,組織の保存,教育,研究への使用,承諾の取得方法等について,郵送による無記名アンケート調査を行い,今後の倫理規定作成の参考とすることにある.そこで,アンケート調査用紙を作成し,その目的,調査内容,協力者のプライバシー保護などに関して,本大学倫理委員会の承認を得た.その上で,対象者を平成10年1月1日〜13年12月31日の間に本学法医学教室で法医解剖された死亡者の遺族のうち解剖承諾書に記名している配偶者や死亡者の3親等以内の遺族と定めた.尚,家族内の犯罪例,あるいはその疑いのある場合や状況によってアンケートへの協力が得られないと判断された場合は除外した.このような基準で対象者を選別し,アンケート用紙を郵送し回答を待っている.
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