2001 Fiscal Year Annual Research Report
DT40細胞と酵母を用いた放射線誘発ゲノム不安定性の研究
Project/Area Number |
13878103
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丹羽 太貫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80093293)
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Keywords | 放射線 / ゲノム不安定性 / 遅延突然変異 / DT40 / ミニサテライト / Rad54ノックアウト細胞 / Ku70ノックアウト細胞 / 酵母 |
Research Abstract |
放射線が突然変異誘発作用の機構とし、放射線によるDNA損傷が突然変異として固定されるという直接的な作用機構が考えられてきた。しかし最近になり放射線は遺伝的不安定性を誘発し、これが突然変異を誘発するという間接的機構の存在が明らかになってきた。われわれのこれまでの研究から、遺伝的不安定性により誘導される生殖細胞突然変異や体細胞突然変異の存在を示してきた。しかしながら、放射線による遣伝的不安定性の誘発の分子機構は明かではない。本研究は、電離放射線によるゲノム不安定性について、まずそのような現象が確認でき、さらに分子・遺伝子レベルでの解析が可能な実験系を確立することを行った。 まず第一に種々の遺伝子についてノックアウトを作成することが容易であり、しかもすでに種々のノックアウト細胞が樹立されているニワトリのDT40細胞についてミニサテライト配列の突然変異解析を行った。マウスPc-1ミニサテライト配列は、放射線による突然変異頻度が高いので、ニワトリの相同の配列のクローニングを行った。その結果マウス同様にGGGCA配列とAGGCA配列から構成されるミニサテライト配列のクローニングに成功した。野生型DT40細胞に3Gyのを照射し、ランダムに得た100個のクローンについてSouthern解析を行ったところ、自然突然変異頻度0%(0/52クローン)にたいして照射したものでは13%(8/63クローン)の突然変異頻度の上昇を観察した。これに対して、Ku70遺伝子ノックアウト株での自然然変異頻度は7%で3Gy照射後に16%となりた。さらにRad54遺伝子ノックアウト株においては、照射・非照射ともに突然変異はほとんど見られず、これよりミニサテライト配列の突然変異誘発には組換え修復機構が関与していることが明らかになった。 酵母では、コロニーの色で解析できるAde2遺伝子変異細胞株を用いた。この系において1個の赤色コロニーのなかに白い細胞群のパピラが生じるものを遅延突然変異として解析を行った。このようなコロニーは、照射後に相当頻度で発生するので、酵母では遅延突然変異が生じている可能性がある。しかしながら、これらのパピラについて遺伝子解析を行ったところ、それらのほとんどがミトコンドリアの欠失によるものであることが明らかになった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Shiraishi K, Niwa O et al.: "Persistent induction of somatic reversions of the pink-eyed unstable mutation in F1 miceborn to fathers' irradiated at the spermatozoa stage"Radiation Research. (in press).
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[Publications] Shimura K, Niwa O et al.: "p53 dependent S phase damage checkpoint and pronuclear crosstalk in mouse zygotes with X-irradiated sperm"Molecular and Cellular Biology. 22. 2220-2228 (2002)
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[Publications] Ohtaki M, Niwa O: "A mathematical model for radiation carcinogenesis with induction of genomic instability and cell death"Radiation Research. 56. 627-677 (2002)
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[Publications] Niwa O, Kominami R: "Untargeted mutation of the maternally derived mouse hypervariable minisatellite allele in F1 mice born to irradiated spermatozoa"Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98. 1705-1710 (2001)
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[Publications] Saito Y, Niwa O et al.: "Genetic loci controlling susceptibility to g-ray-induced thymic lymphoma"Oncogene. 20. 5243-5247 (2001)
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[Publications] Taga M, Niwa O et al.: "Increased frequencies of gene and chromosome mutations after X-irradiation in mouse embryonal carcinoma cells transfected with the bcl-2 gene"Japan Journal of Cancer Research. 91. 994-1000 (2000)