2014 Fiscal Year Annual Research Report
花粉媒介行動の脳の分子神経基盤とその生態系への影響の解明
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13F03074
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 健雄 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10201469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WANG Mu-Yun 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 採餌戦略 / 報酬学習 / 忌避学習 / メダカ / 近交系 / 個性 / 量的形質遺伝子座解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、ゼブラフィッシュには「衝動的(impulsive)」で何度やっても餌に直接的に向かって行き、敵に捕まってしまう個体と、「慎重(careful)」に時間をかけて敵に捕まらないで、上手に餌を取る個体がいることを発見している。このことは、魚類に「衝動的」と「慎重」という行動特性(「個性」)が存在することを示唆している(Wang et al., Animal Behavior 103, 277-283, 2015)。この「動物個性」が遺伝的背景によって規定されているかを知るためには、遺伝的背景が同一な近交系を実験材料に用いて、近交系間の行動の違いを定量化する必要がある。しかしゼブラフィッシュでは近交系が確立されていないため、近交系が既に10種類以上確立されているメダカを材料に実験を行った。本年度は、4つのメダカの近交系(HO5, HdrR-II, HNI-II, drR)を用いて5種類の行動検定を実施し、これらの系統間に行動の違いが検出できるか調べた。その結果、それぞれの行動についての系統毎の出現頻度は、「新奇環境探索行動」についてはdrR>HO5>HNI-II>HdrR-II、「新奇物体探索行動」についてはdrR>HO5>HNI-II=HdrR-II、「新奇個体探索行動」についてはHNI-II >drR=HO5>HdrR-II、「鏡近づき行動」についてはdrR>HO5=HNI-II>HdrR-II、「泡刺激からの逃避行動」についてはHdrR-II> HO5=HNI-II> drR、となった。このことから、drR系統は新奇な外的刺激に積極的に近づく傾向があり、HdrR-II系統は外的刺激から逃避する傾向がある、つまり、メダカの系統間に行動の違い(「個性」)が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
WANG博士は今年度(平成26年度)の11月から育児・出産のため、母国である台湾に帰国した。平成27年秋以降に再開予定であり、その後、中断された採用期間の研究を実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
4種類の近交系(HO5, HdrR-II, HNI-II, drR)を用いて報酬学習と忌避学習の両方を組み合わせた採餌学習テストを行い、「敵」 がいる状態で「採餌」を行う状態を再現する。具体的にはメダカの右側と左側に異なる視覚刺激を提示したときに、正解の方向に移動した時には報酬(餌)を、間違った方向に移動した時には電気ショック(罰)を与える装置を用いる。これまでは罰として泡刺激を与える実験系を用いていたが、一部の系統(drR)は泡刺激を好んで近づいてしまったため、来年度は新たに作成した電気刺激を与える装置を使用する。この装置を用いて、左右の選択に時間がかかるが正解率は高い「慎重(careful)」な系統と、選択に時間をかけないが正解率は低い「衝動的(impulsive)」な系統が存在するかを検定する。また本年度の行動検定の結果と統合し、「慎重(careful)」または「衝動的(impulsive)」という「動物個性」と本年度検定した新奇探索性などの行動特性との関連を調べる。さらに、最も行動特性に差があった2系統を用いて、量的遺伝子座(QTL)解析を実施することにより、両系統の行動差を生み出す遺伝子座を同定する。具体的には2系統を掛けあわせたF2世代の個体の行動検定を1個体ごとに行い、次世代シークエンサーを用いてジェノタイピングを行う。制限酵素で処理したゲノムのRAD-seqを行うことで、約2万種類のSNPマーカを得ることが可能であり、メダカのゲノムサイズは約800Mbであるので計算上平均4万bpごとにマーカが設定される。このような高密度マーカを用いることで、原理的には数個から数十個の遺伝子まで絞ることが可能と判断している。
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