2013 Fiscal Year Annual Research Report
種々の天水田生態系条件下での根の可塑性発揮における遺伝子型×環境相互作用
Project/Area Number |
13F03081
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山内 章 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SURALTA R.r. 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 天水田 / 根 / 可塑性 / 遺伝子型×環境相互作用 |
Research Abstract |
乾燥や降水のパターンが大きく異なるフィリピン国内の以下の地域で、試験を実施した。1)フィリピンイネ研究所本場(ヌエバエシハ州)、2)農家水田(パンガシナン州)、3)農家水田(ヌエバエシハ州)。これらの圃場において、それぞれが所有している品種・系統の耐旱性と根系の機能的役割を評価しようとした。 これまでの研究で、分枝ならびに深根性に関わる可塑性が異なることがすでにわかっている品種を用いて、根箱モデル実験において土壌水分ならびに硬度と、側根発育・土層別根系発育を非破壊的に追跡するとともに、深層根系による吸水速度を測定し、可塑性の機能的役割を定量的に示そうとした。 IR64とその準同質遺伝子系統であるYTK19とYTK313を、根箱を用いて、湿潤条件と土壌水分変動条件で生育させた。5cmの厚さの人工硬盤層(仮比重1.5gcm^<-3>)を土壌表面下15cmに設け、他は1.25gcm^<-3>とした。湿潤区は含水率を25%に維持し、土壌水分変動区は、湿潤と乾燥の間を変動させた。硬盤層を貫入した根をミニライゾトロンカメラで撮影、解析し、それらの根による吸水はマリオットボトルの原理で測定した。 その結果、土壌貫入抵抗値は含水率の低下に伴って増加した。乾燥処理を経た後の再潅水に反応して、YTK313は、YTK191やIR64に比べて硬盤層を貫入した根数が多かった。同様に、硬盤層より下の層からの吸水量も多かった。YTK191やIR64は、湿潤区に比べ土壌水分変動区で乾物重を減少させたが、YTK313は維持した。これらの結果は、根の可塑性は、土壌が乾燥している時ではなく、再潅水によって土壌が湿ったときに発揮され、根は硬盤層を貫入する可能性を強く示唆している。土壌水分変動条件下では、硬盤層を貫入した根は、硬盤層より上の土壌が乾燥しているときに吸水し、乾物生産に貢献すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
圃場試験から得られた試料数が膨大なため、試験終了後の分析や計測と得られたデータの解析に予想以上の多くの労力と時間を費やしている。
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Strategy for Future Research Activity |
土壌硬度と土壌水分率の関係についてはこれまでの調査では不明な点が多かったので、データ計測地点を大幅に増やすことによって、より詳細に変動を評価する。 また、土壌硬度×土壌水分の相互作用が根系発達と吸水機能に及ぼす影響を定量的に評価するモデル実験を開始し、仮説を証明する結果が得られたので、その実験を繰り返して、再現性を検証しつつ圃場試験の結果とも比較する。 以上の結果を総合し、それぞれの栽培地域の条件下で最大生長・収量を保障する形質を有する理想型根系を提案し・関連QTLと環境要因との相互作用を評価することによって、実用性を有した品種育成に向けた今後の研究方向を提示する。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Impacts of soil moisture and hardness at different soil depths on the root growth and dry matter production of rice plants in rainfed lowlands2013
Author(s)
Mana Kano-Nakata, Roel R. Suralta, Filomena S. Grospe, Maria Corazon N. Julaton, Anna Theresa Isabel O. Rebong, Andrea M. Flores, Yoshiaki Inukai, Jonathan M. Niones, Emi Kameoka, Shigenori Morita, Jun Abe, Yoichiro Kato, Yoshimichi Fukuta, Nobuya Kobayashi and Akira Yamauchi
Organizer
韓国作物学会秋季学術発表会
Place of Presentation
大韓民国農村振興庁国立食糧科学院高冷地農業研究センター
Year and Date
20131017-18
Invited