2013 Fiscal Year Annual Research Report
精神障害者のホームレス化の予防とホームレスからの脱却に向けた支援プログラムの開発
Project/Area Number |
13F03201
|
Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
竹島 正 国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所精神保健計画研究部, 部長
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHAO X.m 国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所精神保健計画研究部, 外国人特別研究員
|
Keywords | 精神障害者 / ホームレス支援 / 脱施設化 / 精神障害のあるホームレス / 地域精神保健医療 |
Research Abstract |
近年、日本の精神保健医療福祉政策は、従来の入院中心の精神医療から地域生活を支えるための地域精神保健医療へと転換しているところである。このような地域精神保健医療の充実は国際的な方向であるが、欧米の脱施設化で経験されているように、地域で生活する精神障害者に十分な支援が届かない場合、精神障害者がホームレス状態となる可能性がある。実際、精神障害者の地域ケアを政策課題として掲げている東アジアの日本、中国、韓国においても精神疾患を持つホームレスの存在が確認され、克服すべき社会問題として注目されつつある。このような背景をもとに、本研究では日本、中国、韓国で行われているホームレス支援の現地調査を踏まえて、精神障害のある人のホームレス化の予防とホームレス状態からの脱却に向けた支援プログラムを開発することを目的とした。 昨年度の主な研究活動は時系順に、①欧米諸国、日本、中国、韓国の広範囲な文献レビュー、②日本、中国、韓国のホームレス支援機関への現地予備調査、③国立精神・神経医療研究センター倫理員会においての研究実施の承認、④日本におけるホームレス支援研究協力機関の選定と調査協力の依頼を行った。 精神障害者のホームレス問題は、1960年代欧米諸国が進めてきた脱施設化過程における退院患者のホームレス化や刑務所への収監患者の増加で注目されるようになった。一方、後発的に精神障害者の地域ケアに取り組み始めている東アジアの日本、韓国では2000年以降にホームレスに潜んでいる精神疾患の問題が注目されつつあり、近年の日本では精神疾患のあるホームレスに焦点を当てた民間団体の支援活動、韓国ではホームレス支援機関における精神保健専門支援チームの結成などが見られている。中国の状況は、欧米諸国や東アジアの日本、韓国と異なり医療資源の極端な不足などで1950年代から精神障害者の地域ケアを推進してきた経緯がある。そんな中、近年は急速な経済成長や社会変動などで中国でもホームレスに占める精神疾患患者の割合が目立ち、公費による精神科医療の提供や郊外の村でホームレス経験のある精神障害者の自立生活を支援している先進的なリハビリテーションの実践も見られている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、日中韓の精神障害のあるホームレス、またはホームレス経験のある精神障害者にインタービュー調査を実施する予定で進めてきたものの、初年度の現地調査で3国のホームレス用語の定義、およびホームレスに提供されている医療・福祉サービスの体系と保障水準の差異が大きいことから、まずホームレス支援を行っている現場職員に現場の支援実態についてインタービュー調査を実施するのが適切であると判断した。このため、倫理審査の過程で調査計画の一部修正が行われ、倫理審査の承認を得るまでに時間を要し、本調査の実施がやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
日本のホームレス支援全国ネットワークに加盟し、かつ厚生労働省の公的事業費を受けて、ホームレス等生活困窮者の実態と支援ニーズ等の調査を行った実績のあるホームレス支援機関を対象に、其々の支援機関の管理者、現場支援者、該当機関と連携のある精神保健専門家、精神保健関連団体のメンバーに現場の支援実態についてのインタービュー調査を行う。日本の現場支援者への調査経験を元に、中国、韓国の現場支援者へのインタービュー調査を実施し、3国の調査結果について共同研究者間の意見交換を行う。3国の現場調査の結果を考察し、精神障害のあるホームレス、またはホームレス経験のある精神障害者の自立支援プログラムに必要な精神保健的支援の明確化を図っていく。
|