2013 Fiscal Year Annual Research Report
化合物スクリーニング研究による肝癌個別化医療のための新規標的分子の同定
Project/Area Number |
13F03217
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小嶋 聡一 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 特別ユニットリーダー
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
QIN Xian-yang 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 肝臓癌 / 非環式レチノイド / 分子標的 / メタボローム解析 / PDK4 / エネルギー代謝 / 個別化治療 / 発癌予防 |
Research Abstract |
1)臨床検体及び市販細胞からIn Vitro実験系の確立 東京慈恵会医科大学の松浦知和准教授の協力のもと、肝臓癌患者から樹立された肝臓癌細胞株(JHH7, FLC4, FLC5, HepG2, Huh7)と市販正常肝細胞HC (Hepatic cell)を入手し、In Vitro実験系を確立した。これらの細胞株パネルは抗癌剤の感受性分子あるいは癌特異標的分子の同定に活用する。 2)網羅的オミックス解析を用いた非環式レチノイド(ACR)の肝細胞癌選択的殺細胞作用の標的分子の同定 正常肝細胞HCと肝臓癌細胞JHH7をACR処理し、NMR及びCE-TOFMSメタボローム解析を用いて細胞代謝におけるACRの癌特異的作用の解明及び新規標的分子の同定を行った。その結果、ACRが癌細胞特異的に亢進したエネルギー代謝を抑制することを見られた。JHH7細胞のATP産生はHC細胞より約1.6倍高く、ACR処理によってほぼHC細胞と同じレベルに抑制した。その分子メカニズムを調べたところ、エネルギー代謝調節鍵酵素PDK4の発現はHC細胞ではあまり変化しなくて、JHH7でのみACR処理によって有意に誘導された。さらに、siRNAを用いた機能解析ではPDK4遺伝子発現をノックダウンすることによってACRの癌細胞特異的に亢進したATP産生への抑制作用が見られなくなった。これらの結果から、PDK4依存的に癌特異的に亢進したエネルギー代謝の抑制がACRの肝細胞癌に対する選択的増殖抑制作用と関わることが分かった。また、岐阜大学の森脇久隆教授と共同研究し、肥満マウス肝化学発癌モデルを用いて肝発癌過程におけるACRの癌抑制作用の標的分子の同定も行った。Diethylnitrosamine (DEN)投与発癌マウスでACRを投与し、マウスの肝臓組織を回収し、CE/LC-TOFMSメタボローム解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的は、網羅的オミックス解析等を駆使して新規と既存薬剤の新規標的分子・代謝経路を同定することによってより効果的な個別化治療・予防標的を開発することである。本年度は、メタボローム解析を用いて第3相試験が行われている肝癌再発抑制剤非環式レチノイドACRの標的分子の同定に成功した。この成果は論文1報として国際雑誌に掲載され、計画通りに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)肝化学発癌モデルマウスを用いたIn Vivoメタボローム解析と肝臓癌細胞を用いたIn Vitroメタボローム解析の結果を比較することによって、非環式レチノイドACRの癌抑制作用の標的分子を同定する。 2)肝臓癌細胞株パネルを活用し、オミックス解析牽用いて個別化医療に応用できる抗癌剤感受性分子を見い出す。 3)非環式レチノイドACRの構造相関活性を行い、より効果的な類縁体を開発する。または、ビタミンKやリコペンなどの抗肝臓癌作用を持つ化合物におけるケミカルスクリーニングによる肝臓癌の個別化医療に有用なリード化合物(初期候補化合物)を同定する。 4)可能であれば、肝臓癌幹細胞(Cancer stem cell, CSC)と正常幹細胞(Normal stem cell, NSC)を樹立し、3)から同定されたリード化合物の癌幹細胞特異性を検討する。
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Research Products
(7 results)