2013 Fiscal Year Annual Research Report
化学メカニズムに基づく新しいSERSセンシングプラットフォームの開発
Project/Area Number |
13F03332
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
尾崎 幸洋 関西学院大学, 理工学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JI Wei 関西学院大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | ラマン散乱 / 表面増強ラマン散乱 / 酸化チタン / 化学メカニズム / 半導体 / センシング / クロム / ナノ粒子 |
Research Abstract |
本研究の目的は、化学メカニズムに基づく新しいSERS (Surface-enhanced Raman scattering ; 表面増強ラマン散乱》センシングプラットフォームの開発とその応用である。今年度は、新しい"turn-off"SERS戦略に基づく半導体励起ラマン散乱法を用いて、水溶液中のCr (VI)の高感度、高選択分析の研究を行った。代表者らが提案する方法は、SERSで通常用いられる金や銀などの貴金属を用いることなく、水溶液中の微量金属イオンを検出することができ、センシングプラットフォームとして大変有望なものである。代表者らの方法の特筆すべき優れた点は、"turn-off"戦略を用いることで、これまでの方法よりはるかに簡便である。しかも選択性が高いという点である。代表者らは半導体表面のラベルされたプローブの劣化を検出するという方法を用いている。具体的にはアザリンレッドでセンシングされたコロイド状の酸化チタンナノ粒子を用いて水溶液中のCr (VI)の分析を行った。この場合、コロイド状の酸化チタンナノ粒子はSERSのための基板として働くだけでなく、Cr (VI)の存在下でその表面に吸着したラマンプローブの自己劣化を導く活性部位となる。 Cr (VI)は極めて毒性が高く、飲料水中のその含量の最大許容値は1μMである。しかしながらCr (VI)だけの濃度を高感度で検出できる実際的方法はなく、世界中で簡便にしかも高感度、高選択性の方法の開発が望まれていた。報告者らの方法では、Cr (VI)の選択的定量測定が可能でしかもWHOが要求する感度よりもひとけた高感度である。実際に水道水や池の水等も試料として用いて、この方法の有用性を実証している。したがってこの方法は今後大いに期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、"turn-off"戦略を用いてセンシングプラットフォームを構築することができた。 このセンシングプラットフォームにより、Cr(VI)の濃度測定を実際の水道水や池の水等も含め、水中での濃度が飲料水としての最大許容値1μMより低い濃度で実現することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に提案した新しいSERSセンシングプラットフォームの開発を一層進めるのが今後の方針である。主に以下の3つの点を研究する。 1. 化学メカニズムの研究 : 本研究は半導体励起増強ラマン散乱に関するものであるが、半導体励起増強ラマン散乱はSERSの励起の機構の中で、化学メカニズムに関係する。従って化学メカニズムの研究をさらに進めることが、提案するSERSセンシングプラットフォームのさらなる改良のため重要となる。 2. 提案した方法の最適化 : これまでもすでにセンシングシステムのpH, レーザーパワー、コロイド状酸化チタン状のアリザリンレッドの量など最適条件について検討した。この検討をさらに広範囲に進める必要がある。たとえば用いるラマンプローブの検討、レーザー励起波長などを検討し、より一層の高感度化、高再現性を目指す。 3. 現場での有用性の検討 : いろいろな水道水、河川水、工業用排水などについて提案した方法を用いて、検出感度、再現性、選択性、共存物質の影響などについて調べる。
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