2014 Fiscal Year Annual Research Report
GPCRの短寿命ダイマーによる細胞内シグナルの制御:1分子イメジングによる解明
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13F03404
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠見 明弘 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (50169992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHOU Peng 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Gタンパク質共役型受容体 / オピオイド受容体 / ダイマー / シグナル伝達 / 1分子イメジング / 解離速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の2量体化と下流のシグナル分岐機構は、ほとんど分かっていない。最近の我々の研究によって、この分岐機構についての2つの作業仮説が得られた。これを、GPCRに属する3つの型のオピオイド受容体 (ミュー、デルタ、カッパー型)、下流シグナル分子(3量体Gタンパク質、GPCRキナーゼ)、及び、ドック(足場)分子複合体(後述)を用いて調べている。2つの作業仮説は、以下の通りである。 (1)GPCRのモノマーとホモダイマーが、下流のシグナル伝達系の選択に関与する。 (2)細胞膜内の4種の分子複合体・膜ドメイン(アレスチンドック、EBP50ドック、カベオラドック、ラフトドック)のうち、どれに受容体が取り込まれるかで、下流の選択と、異なった下流シグナルの相対的な強度が決まる。この4種のドックはシグナル変換場であり、下流が異なるというだけでなく、そこでシグナル分子との結合速度、下流分子の活性化レベルなどが、単に受容体と下流シグナル分子の相互作用でなく、ドックの性質と、足場タンパク質との相互作用によって決まる。 前年度までの研究で、ヘテロダイマーの形成は、起こりにくいか、起こっても寿命が短かいという、文献からは予想できなかったことが見いだされた。そこで、本年度はこれについて、さらなる検討を進めた。検出が困難なダイマーなどを検出するため、動径分布関数をもとに共局在を定量化する方法を開発した。コントロール(緑と赤の画像が得られたとして、コントロールでは赤の画像を反転させる)の場合の関数値と統計的に比較することによって、検出が難しかったダイマー検出を可能にした。さらに、ホモダイマーやヘテロダイマーの形成が、アゴニスト、インバースアゴニストの添加によって、変化する様子を詳細に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進行して、ほぼ予定通りのペースで進んだ。 (1)昨年度は顕微鏡の改善を行い、2ミリ秒の時間分解能で、オピオイド受容体の2量体化が観察できるようにした。この結果、寿命の短いヘテロダイマー(70ミリ秒程度の寿命でも捕捉できる)でも、検出することが可能になった。さらに、それでもヘテロダイマー検出は簡単ではなかったので、動径分布関数をもとに共局在を定量化する方法を開発した。コントロール(緑と赤の画像が得られたとして、コントロールでは赤の画像を反転させる)の場合の関数値と統計的に比較することによって、検出が難しかったダイマー検出を可能にした。その結果、3種のオピオイド受容体間での、ホモダイマー、及びヘテロダイマーの形成が確実に捉えられた。その結果、ヘテロダイマーの寿命は、ホモダイマーの寿命に比べて30%程度短いことがわかってきた。 (2)ホモダイマーもヘテロダイマーも、アゴニスト添加によってダイマー寿命が短くなる傾向が見いだされた。アゴニストによって、ダイマー寿命が短くなる程度は異なっていた。逆に、インバースアゴニストの添加によって、ダイマー寿命が長くなる傾向が見いだされた。アゴニストの場合と同様、ダイマー寿命が長くなる程度は異なっていた。 (3)現在、オピオイド受容体が、4種のドック、すなわち、アレスチンドック、EBP50ドック、カベオラドック、ラフトドックのどれにはいるかの解明を進めている。この解明には、1分子が追跡できる時間を、現在より10倍程度長くする必要が認められ、それを達成した。1分子追跡できる時間は、蛍光色素の褪色までの時間と点滅の頻度によって決まる。細胞への影響が少ない条件で、試料中の酸素分子濃度を制御し、酸化剤と還元剤の両方を添加することにより、これらの問題を大きく改善することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)本年度の研の結果に基づき、特に、1分子追跡が可能な時間が10倍程度延長できた方法に基づき、オピオイド受容体が、シグナル変換を活発におこなっていると推定される4種の構造体(ドック)、すなわち、アレスチンドック、EBP50ドック、カベオラドック、ラフトドックのどれとどのように相互作用するか、それらのドックにどのように入って、その中ではどのように挙動するかの解明を進める。 (2)これまでの検討から、EBP50 分子が、細胞質から細胞膜の細胞質側表面へとリクルートされ(何らかの膜分子に結合して)、しばらく拡散運動した後に、短時間オピオイド受容体に結合したり、アクチン膜骨格に結合して静止したところに、オピオイド受容体がやはり短時間結合するという過程が見えてきた。これは、予想を超えてはるかに動的なドック(EBP50ドック)の存在を示唆しており、これを徹底的に調べる。 (3)これまでの本研究室での研究結果と本研究の結果から、ホモダイマーやヘテロダイマーがGPCRに広く保存されていることが明らかになりつつある。そこで、本研究では、3種類のオピオイド受容体を用いて、ダイマー形成に関与する部位を同定する。すでに、我々は、オピオイド受容体のN末の40アミノ酸がヘテロダイマー形成に関わっている可能性、さらに、最初の膜貫通ドメインがヘテロダイマー形成に関わっている可能性を見いだしている。これらを詳しく検討していく。そのためには、受容体のアミノ酸を様々に改変し、また、見いだされたアミノ酸配列をもつペプチドを合成して添加するなどして、それらがヘテロダイマー形成を阻害するかどうかを調べる。また、文献では、C末の細胞内部分がホモダイマー形成に関わるという示唆がなされている。これも検討する。さらに、両者の結合部位がもし機能すれば、ヘテロテトラマーも形成されるはずであり、それを検討する。
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Research Products
(2 results)