2013 Fiscal Year Annual Research Report
初期発声映画を巡る言説の歴史:日本と朝鮮の比較研究
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13F03732
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤木 秀朗 名古屋大学, 文学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JOO Woojeong 名古屋大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 発声映画(トーキー) / 日本映画 / 朝鮮映画 / 植民地 / 映画批評 / 映画ジャンル |
Research Abstract |
1930年代日本と朝鮮での発声映画を巡る言説の歴史を、主に当時の雑誌記事を中心とした資料調査と、理論的文献およびジャンル論の再検討をもとに研究を行った。日本では、資料調査は『キネマ旬報』(1934年-1936年)と『映画評論』(1934年-1940年)に掲載されている発声映画関連の記事や批評を調査収集した。そして、その中の『キネマ旬報』1934年度分の内容分析を行った。その結果、この時期に外国(とくにハリウッド)発声映画の影響力があったこと、また、その言語的問題の解決策として説明者やダビング版(所謂「日本語版」)等が試されたことが確認できた。 理論的側面については当時の批評家のうち岩崎昶、飯島正、岸松雄、筈見恒夫等の著作物を調査し、最初に岩崎昶のトーキー論を分析した。彼の見解は、トーキー自体は無声映画から進化した芸術形式であると見なす技術的楽観論である一方、その形式の歴史的、経済的背景にはアメリカの映画産業との関係があることを認識していたと確認できた。彼の問題意識を分析することにより、1)発声映画とジャンルの関係(つまり特定なジャンルが選ばれる原因)、2)発声映画と資本主義の関係の二つの主題が明らかになり、今後の分析の枠組みとして有効だと判断できた。 朝鮮については、資料調査を中心して『映画時代』、『映画演劇』、『四海公論』、『朝鮮之光』などの雑誌記事を収集し整理した。また、単行本として刊行されている植民地期雑誌記事集(『日本語雑誌で見る植民地映画』、『日常生活と近代映像媒体』)と植民地政府の検閲統制関連の本(『植民地時期検閲と韓国文化』、『朝鮮映画統制史』)などを購入し、調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り重要な雑誌の資料調査は日本・韓国の両方でほぼ行うことができた。二次資料を含む理論的文献の分析は多少遅れているところもあるが次年度にもっと集中すれば問題ないと考えている。ジャンルの問題はアメリカ・朝鮮の場合との比較やそれに対する観客の反応という点で次年度の研究でも重要な課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
当年度の成果を続けるようそれぞれの調査課題において分析の拡張・深化を目指す。資料の分析は日本の雑誌の場合、『映画評論』を『キネマ旬報』の論旨と比較しながら調査する。また『映画往来』と『映画芸術研究』を追加で調査する。朝鮮については、昨年度調査した資料を分析しながら新聞記事や雑誌「三千里」、「別乾坤」(何れもインターネットで検索できる)を追加調査する計画である。他方、理論的文献は日本の批評家を中心して読み続けながら朝鮮の立場(例えば沈熏、徐光霽等)と比較する。また二次資料の分析を急いで、日本と朝鮮の場合だけではなく西洋の理論書(「Film Sound : Theory and Practice」、「Lowering the Boom」)と東アジア地域に関わる研究(「「帝国」と「祖国」のはざま」、「戦時日中映画交渉史」)を検討する。ジャンルについては自然ドキュメンタリー以外にニュース映画と戦争物の研究も観客層の分析とともに行って年度内に学会発表と論文提出を目指す。
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Research Products
(5 results)