2014 Fiscal Year Annual Research Report
南極沿岸ポリニヤの研究:特に定着氷との関係と高密度水形成について
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13F03748
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大島 慶一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (30185251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FRASER Alexander 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海氷 / 南極海 / 定着氷 / 沿岸ポリニヤ / リモートセンシング / MODIS / 南極底層水 / 赤外線データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、東南極で行っていたModerate-Resolution Imaging Spectro radiometer (MODIS)の可視・赤外線データから定着氷を検出する手法を、全南極に適用することが主なテーマである。前年度に前処理を完了したMODISの可視・赤外線データから、ドイツのトゥリア大学のWillmes博士が北極海で開発した手法を応用し、共同して大容量データから半自動化して南極の定着氷の検出を行った。この結果、ケープダンレーポリニヤやバリヤポリニヤを含むプリッツ湾周辺とロス海沿岸周辺の2海域で、高分解能の定着氷の時系列データ作成を完了した。これらの海域は高海氷生産による南極底層水生成海域として注目される海域である。ケープダンレーポリニヤでは、苫小牧高専の二橋創平博士が作成した海氷生産量データと比較することで、海氷生産量は気温や風ではなく、定着氷の形状によって決まることが示された。気温が低く風が強い期間はポリニヤ内部でも定着氷が発達することにより、海氷生産量が低くなる場合もあるという結果となった。これらの結果はポリニヤでの海氷生産量は気温が低いほど沖向きの風が強いほど大きくなる、という常識を覆すものである。バリヤポリニヤにおいても、定着氷の発達度合いが海氷生産量を決める最大要因であることが示された。これらの結果は、定着氷の分布が海氷生産を通して、高密度水さらには南極底層水の生成量を決める重要な要因であることを示唆するものであり、本研究課題の主テーマである、全南極海での定着氷の高精度マッピング、の意義を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大容量のMODISデータから、半自動化して定着氷を検出するアルゴリズムを開発したことは、大きな前進である。この手法開発により、格段に早く定着氷の検出を行うことが可能となり、予定通り14年間の全南極海での定着氷データセット作成の目処が立った。また、特に重要な海域で作成した定着氷の時系列データから定着氷と海氷生産量の明瞭な関係が明らかになった。以上から、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、平成27年度をもって、全南極海での定着氷データセットを完成させる。昨年度開発した、半自動化して南極の定着氷を検出する手法は、汎用性・新規性があるので、半年以内に学術論文として投稿する予定である。また、ケープダンレーポリニヤで明らかになった定着氷と海氷生産量の関係についても、底層水形成とその変動にも関係づけて、学術論文として投稿する予定である。この結果は平成27年6月にチェコのプラハで行われるIUGGでも発表する予定である。国立極地研究所の田村岳史博士と牛尾収輝博士とも共同して、南極昭和基地のあるリュッツォ・ホルム湾での定着氷の季節・経年変動を明らかし、得られた知見を日本南極地域観測隊による「しらせ」の航行戦略に役立てる。
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Research Products
(4 results)