2014 Fiscal Year Annual Research Report
1型糖尿病におけるTRPA1,TRPM2チャネル関与の検討
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13F03795
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
富永 真琴 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90260041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DEROUICHE Sandra 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPチャネルのI型糖尿病発症への関与の検討を主課題としていたが、進行が思わしくなく、「唾液線および涙腺でのTRPV4/anoctamin 1 (ANO1) 機能連関を介した唾液、涙分泌」にテーマを変更して実験を進めた。マウス単離唾液腺房細胞の培養系を確立し、TRPV4および ANO1の蛋白質レベルでの発現をWestern Blotting法、免疫染色法で確認した。また、マウス単離唾液腺房細胞でカルシウムイメージング法を用いて、TRPV4刺激剤による細胞内カルシウム濃度の上昇とそれにともなう細胞容積の縮小を観察した。このTRPV4刺激剤による細胞内カルシウム濃度の上昇と細胞容積の縮小は細胞外カルシウム依存的であり、TRPV4欠損マウスから調整した単離唾液腺房細胞では観察されなかったことから、TRPV4を介して流入したカルシウムによってANO1が活性化してクロライドイオン流出が水の流出(細胞容積縮小)を惹起しているものと考えられた。加えて、細胞内140mM CsCl、細胞外140 mM NaClの条件下で全細胞型パッチクランプ法によって外向き整流性を示す電流の活性化が観察された。この電流は、TRPV4阻害剤で完全に抑制されたことから、TRPV4の活性化を介して起こっていると考えられた。また、細胞内外140 mMNMDG条件下では、TRPV4刺激剤で外向き整流性を示すクロライド電流の活性化が観察された。こうした実験から、TRPV4活性化によって流入したカルシウムによってANO1が活性化したものと結論した。マウス単離涙腺房細胞培養系も確立し、アセチルコリンのみならずTRPV4刺激剤で細胞内カルシウム濃度の上昇が観察された。マウス眼からの涙分泌量を測定し、アセチルコリンのみならずTRPV4刺激剤で涙分泌の増大が観察された。よってTRPV4/ANO1機能連関によって涙腺房細胞から水分(涙)の流出が起こっているものと推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス単離唾液腺房細胞および涙腺房細胞の培養系の確立に成功し、TRPV4/ANO1機能連関をある程度確認できたと考えている。唾液腺からの唾液放出にANO1が関わることは明らかになっていることから、そのANO1活性化がTRPV4活性化によるカルシウム流出によってもたらされていることを示すデータが得られた。涙腺からの涙分布にTRPV4, ANO1が関わるのは全くあたらし発見であり、それを詰める実験が必要である。また、涙腺からの涙分布にTRPV4活性化が関わることはin vivoで示せたが、唾液分泌にTRPV4/ANO1機能連関が深く関わっていることは、まだ十分には証明できていないので、その検証も必要である。このプロジェクトを始めて約6ヶ月であり、著しい研究進展があったと言ってよい。細胞レベルでの検討は大きく進んでおり、組織レベル、個体レベルでの解析を進めることが望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ、次のことを進めたい。① TRPV4/ANO1機能連関があることをマウス単離唾液腺房細胞および涙腺房細胞にパッチクランプ法を適用してANO1阻害剤を用いて検証する。② 単離唾液腺房細胞および涙腺房細胞での細胞内カルシウム濃度上昇と細胞容積縮小の時間的・量的連関を詳細に解析する。③ マウス唾液腺記からのTRPV4ならびにANO1活性依存的な唾液分泌をex vivo実験系を確立して検証する。④ TRPV4依存的な唾液分泌が生理的に重要であることを、in vivoで刺激依存的な唾液分泌の差異を野生型マウスとTRPV4欠損マウスで比較検討する。ANO1阻害剤の効果も検討する。⑤ 正常時あるいは刺激時のin vivoでマウス眼からの涙分泌量の差異を野生型マウスとTRPV4欠損マウスで比較検討する。ANO1阻害剤の効果も検討する。こうした実験によってマウス唾液および涙の分泌にTRPV4/ANO1機能連関が重要であることを証明したい。
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