2013 Fiscal Year Annual Research Report
産業としての自己啓発:サービス供給者・消費者・産業構造についての社会学的研究
Project/Area Number |
13J00037
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
牧野 智和 立教大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自己啓発書 / 編集者 / 読者 / OJT |
Research Abstract |
本年度は、自己啓発産業の担い手については自己啓発書の編集者に、産業の消費者については自己啓発書の読者にそれぞれインタビューを行った。インタビューを行った人数は編集者が計9名、読者が計16名である。編集者へのインタビューの内容は、自己啓発書の制作プロセス、読者のニーズの取り込み方、自己啓発書が求められる社会的背景についての認識、企業文化、社長・社員の特性、自己啓発書購読の有無等であった。読者へのインタビューの内容は、自己啓発書購読の動機・きっかけ、自己啓発書の影響、周囲の環境や自身のライフヒストリーと購読行為との関係、セミナー等への参加の有無などである。自己啓発書購読を促す契機として多くの読者が語っていたのは、企業における教育システムの弛緩であった。つまり、企業内の流動性の上昇や労働強化によって、社員間の緊密なコミュニケーションが弛緩し、上司・先輩から部下・後輩へのOJT的な実務スキルの伝達に齟齬をきたすような企業・部署に勤めていることが、社内では得られない知識・スキルの自己獲得としての自己啓発書購読へと向かわせるのではないかと推察させるような語りが多く採取できた。これはインタビューから得られた知見の一部に過ぎないが、このような、自己啓発書購読を下支えする包括的な社会的文脈を捉えるための手がかりを多く得ることができた。 また、プレジデント社の雑誌『プレジデント』のオンライン版において、近年の自己啓発書の傾向およびその社会的背景について考察を行う連載「ポスト『ゼロ年代』の自己啓発書と社会」の執筆活動に従事した。本研究計画に関する部分としては、女性の生き方に関する自己啓発書、就職活動のハウ・トゥ本、掃除・片づけに関する自己啓発書が特に関係し、それらのジャンルの啓発書をそれぞれ数十冊ずつレビューしたことで、次年度以降に進めていくそれらのサービスに関する調査の下準備がなされることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフォーマント(インタビュイー)との調整上の事情によって、当初の初年度の研究計画と、本年度実際に研究が進行した内容は異なるものの、3か年における研究計画の1年分に相当する調査結果は得られたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
自己啓発書読者へのインタビューは機縁法によるものだったが、そのため、読者16名全員が正規雇用への従事者という、サンプルの偏りを生んでしまった。そのため、次年度では非正規雇用従事者へのインタビューを重ねることで、自己啓発書購読を支える文脈をより包括的に明らかにすることができると考えられる。
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Research Products
(7 results)
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[Book] Youth and Work Transitions in Changing Social Landscapes2013
Author(s)
Tomokazu Makino, Karen Evans, Helena Helve, John Bynner, Ingrid Schoon, John Schulenberg, Mette Ranta, Jaana Lähteenmaa, Rosalind Edwards, Susie Weller, Sheena McGrellis, Janet Holland, Arseniy Svynarenko, Tracey Rey nolds, Katariina Salmela-Aro, Hely Innanen, Helen Cheng, Ingrid Schoon, Edmund Waite, Johanna Wyn, ほか4名
Total Pages
358 (252-265)
Publisher
Tufnell Press (UK)
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