2013 Fiscal Year Annual Research Report
赤外分光法による(6-4)光回復酵素の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J00170
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 大智 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 生物物理 / 赤外分光法 / 光回復酵素 / 光産物 / DNA / 構造変化 / 中間体 / 同位体標識 |
Research Abstract |
本研究では赤外分光法を用いて、紫外線によって損傷したDNA((6-4)光産物)を修復する(6-4)光回復酵素を対象に、(6-4)光回復酵素が機能を発現するための活性化における構造変化及び光修復における反応メカニズムを解明し、活性化に必要な構造変化が何であるのか、光修復の過程でどのような化学反応が起こっているのかを明らかにすることを目的とする。本年度の研究成果の概要を以下に記述する。 1. 未だに酵素活性をもった完全還元型を捉えた結晶構造はなく、完全還元型における基質と結合した構造情報は不明である。そこで、活性化における変化を基質がある場合と無い場合で比較することで、基質特異的な構造変化を捉えることができるのではないかと考えた。その結果、完全還元型形成に伴う構造変化において、3つの領域で基質の有無に違いが見られ、同位体及び変異体による測定から、基質のC=O基、タンパク質骨格、His残基に由来する変化であることが分かった。このことから、活性化に伴ってタンパク質骨格が変化し、基質と近傍のHis残基の位置が動いていることが分かった。さらに、野生型で見られたタンパク質骨格の変化は、His残基を変異した(光修復活性の無い)変異体では見られなかったことから、この活性化に伴ったタンパク質骨格の変化が、その後の光修復反応において重要な役割を果たしていると考えられる。この研究結果は現在論文にまとめている段階である。 2. 活性化と同様に光修復過程における構造情報はほとんど得られていない。そこで、低温での(6-4)光産物の光修復測定を試みたところ、277Kで見られた修復に伴う赤外差スペクトルとは異なる3つの異なるスペクトル(77,200,230K)スペクトルを捉えることに成功した。これらの赤外差スペクトルは(6-4)光産物の修復中間体に由来する信号を含んでいると考えられる。次に同位体標識したタンパク質を用いて、測定を行ったところ、基質のC=O基とタンパク質骨格の変化に加え、基質のリン酸骨格の変化が起きていることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(6-4)光回復酵素の活性化及び光修復に伴った赤外差スペクトルの振動バンドの帰属を行うための、変異タンパク質及び同位体標識タンパク質の作製方法の確立に成功し、得られた振動バンドの帰属が可能になった。また、液体窒素温度である77K~常温において、温度を変えて修復実験の測定を行い修復中間体を捉える条件を確立するなど、反応メカニズムの解明に向けた研究が順調に進んでいることが理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、温度を変えて修復実験の測定を行い修復中間体を捉える条件を確立した。今後は、さらに(6-4)光産物の信号を同位体標識した(6-4)光産物を用いて測定を行うことで、(6-4)光産物が光修復される過程で起きている化学反応を明らかにしていく。また、平成26年度は光回復酵素間の機能転換への試みも行っていく。(6-4)光回復酵素のほかに、CPD(損傷DNA)を修復するCPD光回復酵素があるが、CPD光回復酵素と(6-4)光回復酵素がそれぞれ特異的な損傷DNAのみを認識して修復する機構などは未解明である。そこで、遺伝子工学を駆使して光回復酵素間の機能転換を試みることで、DNA修復能が生まれる要因を明らかにすることを目指す。
|
Research Products
(8 results)