2014 Fiscal Year Annual Research Report
赤外分光法による(6-4)光回復酵素の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J00170
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 大智 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 生物物理 / 赤外分光法 / 光回復酵素 / 光産物 / DNA / 構造変化 / 機能転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では赤外分光法を用いて、紫外線によって損傷したDNAであるCPDと(6-4)光産物をそれぞれ修復するCPD光回復酵素と(6-4)光回復酵素を対象に機能転換を試み、それぞれ特異的な損傷DNAのみを認識して修復する機構が何によるものなのかを調べた。本年度の研究成果の概要を以下に記述する。 DNA光回復酵素は、紫外線によって生じたDNA損傷を、近紫外光あるいは青色光を使って修復することができる酵素である。光回復酵素には、シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)を修復するCPD光回復酵素と(6-4)光産物を修復する(6-4) 光回復酵素があるが、それぞれ特異的な損傷DNAのみ修復する機構などは未解明である。そこで、先ず変異導入法により(6-4)光回復酵素からCPDを修復する酵素への変換を試みた。赤外分光(FTIR)法を用いて(6-4)光回復酵素によるCPDの赤外スペクトルを計測したところ、三重変異体においてCPDを修復するシグナルが得られた。また、修復に伴うバンドの時間依存性を調べた結果、三重変異体が最も高い活性能を有することがわかった。さらに、赤外スペクトルからCPD光回復酵素ではタンパク質骨格に由来するAmide Iの大きな変化が検出されたのに対して、(6-4)光回復酵素の三重変異体では、タンパク質骨格に由来する変化がほとんどないことが分かった。このことから、CPD光回復酵素のタンパク質骨格の変化が修復活性能を高めている要因だということが示された。次に対応するアミノ酸をCPD光回復酵素に導入し、CPD光回復酵素から(6-4)光回復酵素への機能転換を試みた。作製したCPD光回復酵素の三重変異体の測定を行ったところ、(6-4)光産物の修復反応は確認できず、(6-4)光回復酵素への機能転換は達成できないという非対称的な結果となった。この研究内容は、現在論文を作成中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
変異体導入法を駆使し、光回復酵素間の機能転換を行ったところ、(6-4)光回復酵素からCPD光回復酵素への機能転換に成功した。また、その機能転換を約500アミノ酸残基ある内のたった3つのアミノ酸変異により実現しすることができた。興味深いことに、CPD光回復酵素に対応するアミノ酸変異を入れても(6-4) 光回復酵素への機能転換は実現しないという非対称な結果となった。この結果は機能発現メカニズムだけでなく、進化も視野に入れた議論ができることが、当初の計画以上に進展していると考えている理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、(6-4)光回復酵素からCPD光回復酵素への機能転換に成功した。今後はさらにCPD光回復酵素から(6-4)光回復酵素への機能転換に挑戦し、DNA修復能が生まれる要因を明らかにする。また、平成27年度は、温度を変えて(6-4)光産物の修復実験を行うことで修復中間体を捉えたい。さらに(6-4)光産物の信号を同位体標識した(6-4)光産物を用いて測定を行うことで、(6-4)光産物が光修復される過程で起きている化学反応を明らかにしていく。これらを総合することで、(6-4)光回復酵素の修復メカニズムの解明を目指す。
|
Research Products
(13 results)