2013 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体中での刺激応答性高分子の自己組織化と秩序構造形成
Project/Area Number |
13J00192
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
北沢 侑造 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 温度応答性高分子 / イオン液体 / ゾル-ゲル転移 / ブロック共重合体 |
Research Abstract |
当研究室ではこれまでにイオン液体(以下ILと略記)中で温度応答性を示す高分子を見出すと共に、光刺激応答性を示すアゾベンゼン構造を含有する高分子が、アゾベンゼンの光異性化(cis-trans異性化)状態に応じて相転移温度を大きく変化させることを見出した。この現象を利用すると、両端にアゾベンゼン構造を含有した温度応答性高分子を、中央にILと相溶する高分子を配置したようなABA型のトリブロック共重合体において、光および温度により両端に配置したブロックの凝集・再溶解のを制御できるようになり、光・温度により誘起されるゾル-ゲル転移を発現することが期待できる。 本年度は上記の目的のためアゾベンゼン含有高分子として低温相溶-高温相分離のLCST型の相転移を示すbenzyl methacrylate(以下BnMAと略記)とアゾ構造を有する4-phenylazophenyl methacrylate(以下AzoMAと略記)からなるランダム共重合体P (BnMA-Γ-AzoMA)をトリブロック共重合体の両端に、中央にILと親和性のあるpoly (methyl methacrylate)(以下PMMAと略記)配置することを試みた。しかし、温度応答性高分子であるPBnMAの相転移温度が105度と高温であるため、アゾベンゼン構造のcis-trans異性化が温度によっても生じてしまう懸念がある。そこで温度応答性高分子の構造やILの構造を最適化することで、最終的に得られるゲルとしての物性を維持しつつ相転移温度を制御することを試みた。当研究室のこれまでの成果から、BnMAモノマーの側鎖のメチレンスペーサーを1つ増やした2-phenylethyl methacrylate(以下PhEtMAと略記)へ構造を変化させることで高分子の相転移温度が約60度も低下することを報告している。また、ILの構造によっても相転移温度は制御できることが報告されている。そこで、PPhEtMAを両端に、中央にPMMAを有するトリブロック共重合体を合成し、その温度応答性自己組織能やゲル化能を調査した。その結果、ゲルの弾性率は維持しつつ相転移温度を低下させることに成功した。また、高分子/ILの組み合わせを最適化することで、高分子濃度を低下してもゲル化できる系を報告することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とした光および温度による刺激応答性高分子の自己組織化およびそれを利用したゾル-ゲル転移の誘起には至っていないが、今年度は温度応答性高分子を両端に有するABA型トリブロック共重合体の自己組織化を利用した高分子ゲルの相転移温度に関する検討を行った。検討を通して、ゲルとしての物性を損なうことなく温度応答性高分子の相転移温度の制御によりゾル-ゲル転移温度の低下を引き起こすことができ、さらにゲル化に必要な高分子濃度も低下することができている。特に高分子濃度の低下はゲル中でのイオン輸送特性など電気化学的な性質に直接関係するパラメータであることから、高分子構造によるゲル化濃度の変化は今後の研究の進展に深く関わる成果であると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた成果を元にトリブロック共重合体への光応答性セグメントの導入を行っていく予定である。また、得られたイオンゲルの材料としての応用範囲を広げるために、当研究室でリチウムイオン電池の電解液として利用している溶媒和イオン液体中における温度応答性高分子の探索も行っていく。特にリチウムカチオンを有する塩と対称グリコールジエーテルであるグライム類の混合物はイオン液体類似の性質を示すことが当研究室により報告されており、例えばlithium bis (trifluoromethane sulfbnyl) amide (Li[TFSA])とtetraglyme(G4)の当モル比混合物である[Li(G4)][TFSA]は、G4がLi+に対してクラウンエーテルのように巻きついて配位することで錯カチオン[Li(G4)]^+を形成する。この錯カチオン形成により[Li(G4)][TFSA]はG4分子の蒸発温度以上においても熱重量減少がなく、熱安定性の向上確認されている。また、このイオン液体はLi^+をカチオン構造に有することで、系内のリチウムイオン濃度が2.5mol dm^<-3>以上と非常に高いことも特徴である。このような優れた特性を材料として利用するため、溶媒和イオン液体を高分子の溶媒とする系における高分子の溶解性について検討を行っていく。実際には高分子の溶解性のスクリーニングを行って探索していく。現在のところこれまで利用してきたPBnMAがイオン液体中と同様に溶媒和イオン液体中においてもLCST型の相転移を示すことがわかっている。今後は、Li^+のみならずその他のアルカリ金属塩などを用いることで錯カチオン構造の転移温度に与える影響を調査していく予定である。またそれと同時に材料としての展開も目指し、電池等の電気化学デバイスへの適用も検討する予定である。
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Research Products
(8 results)