2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00205
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷本 溶 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 場の量子論 / 作用素環 / 可積分系 / 散乱理論 / 共形場理論 / 作用素論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元の可積分な場の量子論について、代数的場の量子論の観点から研究を行った。 昨年度に引き続き、作用素環を使った場の量子論へのアプローチであるHaag-Kastlerネットの新しい例を構成することを目指している。2次元時空では、弱い局所性を持つ作用素値超関数(wedge-local field)を構成し、それがよい性質を満たせば、Haag-Kastlerネットが構成できることがわかっている。可積分な場の量子論では、散乱行列が2粒子の散乱行列からすべて決定されることが期待され、そのような候補となる散乱行列も数多く得られている。本年度の目標は、それらの候補が与えられたとき、それを正しく散乱行列として持つHaag-Kastlerネットを構成することであった。 もっとも簡単なクラスの散乱行列については、Lechnerによってwedge-local fieldを通した構成が行われた。このクラスの散乱行列の特徴は、ある複素領域に極を持たないことである。これは粒子の束縛状態が存在しないことと対応していると考えられている。昨年度の研究では、このLechnerの結果を拡張し、極がある場合にもwedge-local fieldの候補を見つけていた。これは束縛状態があることに対応すると考えられており、通常の場の量子論の摂動論では捉えがたい性質である。 Wedge-local fieldの重要な性質として、wedgeと呼ばれる時空の領域に対応する作用素が強可換する、ということがある。散乱行列に極がある場合、本研究で見つけたwedge-local fieldの候補はその自然な定義域が試験関数ごとに違うため、強可換性を証明するりが難しい。本年度は、この証明に取り組んだほか、wedge-local fieldからHaag-Kastlerネットの構成がうまく行くことを確認した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
散乱行列に極がある場合のwedge-local fieldの構成について、強可換性がこれほど難しい問題になることは予想外であった。これは、点状に局所化した量子場であるWightman fieldの存在と関係しており、これらの極がある場合では、Wightman fieldが存在しない、もしくは存在の証明が既存の場合と異なり、著しく難しくなることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって、上で述べた強可換性は、ある作用素の自己共役性から従うことがわかった。この作用素は加算無限個の直和に分解でき、初めの3つの直和要素に関しては、自己共役性の証明が得られている。これを一般化し、強可換性の証明を完成することを目指す。その後は、modular nuclearityと呼ばれる条件を示せばHaag-Kastlerネットの存在が従うことが知られている。強可換性を仮定すれば、このmodular nuclearityは、私の考えている例では既存の場合より簡単に示せると予想している。これらを最終年度に解決することを目指す。また、散乱行列がスカラーでない場合についても構成方法を拡張することを試みている。後者の例としてはsine-Gordonモデルが挙げられる。
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Research Products
(7 results)