2014 Fiscal Year Annual Research Report
食品分析のためのシリコン導波路によるテラヘルツ波分光法の開発
Project/Area Number |
13J00213
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内藤 啓貴 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | テラヘルツ波 / 液体食品 / 分光技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロッド形状を細くすることで,サンプル情報量向上させることを目指したが,そのためには細いロッドに入射する電磁波をより効率的に集光する必要があった.現在使用しているセラミックヒーター(グローバー光源)では,点光源とみなすためにはアパーチャーが必要であり,それにより光量の減衰が問題となった.その一方で,集光系の小さいLDLS(Laser Driven Light Source)の導入を目指したが,テラヘルツ分光において必要な真空化での使用が現時点では難しく,光源の進歩が待たれる状態である.このため,本年度は比較対象としていたATRによる食品中の沈殿物を測定することに注力して研究を遂行した. また,シリコンロッドを用いた研究と比較を行うために取り組んでいたATR法による測定において,乳牛の乳房炎の診断を行う上で指標となる乳中体細胞数を測定するためのモデルサンプルを用いた実験に成功している.この結果を投稿論文にまとめて,本年度に国際誌にて受理された.また,本年度は実応用を踏まえて,生乳を用いた実験を行った.細胞の情報を抽出するために遠心分離により生乳の中層と下層を分離しそれぞれのスペクトルを差分する差スペクトル法により得られた信号から乳中体細胞数の推定を行った.その結果.正常な乳牛の乳中の体細胞数と乳房炎乳の目安である体細胞数を139 cm-1の信号強度から92 %の精度で識別できた.また散乱の影響が少ないことから,スペクトル全体を用いた散乱補正法を用いる必要がなかったため、単一波長による乳中体細胞数の定量が可能となった.さらに私は、①細胞と水の吸収差、②温度依存による誤差、③プリズム上の細胞サイズとエバネッセント波の深さとの関係を波数毎に比較し、測定に最も効率的と推定された波数が実験値と一致することを確認した.今後は潜在性乳房炎の目安である体細胞数(2.0×105 /mL程度)を精度よく測定する手法を考案していく予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シリコンロッドを用いた液体のセンシング手法も試みたものの,測定の要件を満たす光源の導入が困難であったことより,ATRを用いた計測ならびに散乱光の測定を中心に行った。ATRの実験に関しては既に投稿論文が受理され、さらに次の論文のためのデータもそろっている。さらに散乱を用いた実験に関しても、使用波長の選定が進み来年度の実験につながる内容を残している。 また,活発な研究活動を支える研究ネットワークに関しても,引き続き拡大しており,アウトリーチ活動として,高校教諭とのネットワークを活かして高校生への出前授業も行った。今後,その幅広い人的ネットワークを利用した問題解決能力の養成,研究の進展が大いに期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
長波長電磁波による乳牛の乳房炎診断のための乳中体細胞数計測を行うことを大目標とし,吸収や散乱の情報を組み合わせることで生乳中の細胞数を定量出来る測定法の開発を目指す.本研究はそのための基礎情報の取得を行うという位置づけとし,吸収測定と散乱測定の細胞計測に対する応用可能性をそれぞれ別途に検討する.まず,中赤外領域における散乱測定に適した実験系の構築を行うことを目的とし,実験系構築やその評価の容易さを考慮し,実際の生乳ではなく,水,細胞入り培地の散乱信号強度を測定する.次に,第二段階として,生乳中の細胞数のみが変化するモデルサンプルを作成し、本実験で使用するIR-QCLの波長により乳中の細胞数の違いにより散乱が異なることを確認する.また,体細胞数の異なる生乳を用意することで,本実験で用いる赤外領域の電磁波による散乱測定が実際の応用の可能性があるかどうかを検証したが,脂肪球などの他の散乱体の影響が見られたため,次年度は脂肪球の散乱影響の小さいより長波長の電磁波を用いた散乱測定法の応用可能性を検証することとする.
|
Research Products
(3 results)