2013 Fiscal Year Annual Research Report
ブラジルにおける日系人の「祖国」意識の維持と変化-「臣道聯盟」を事例として-
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13J00222
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新谷 光 アルベルト 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ブラジル日本移民 / 臣道聯盟 / 文化変容 |
Research Abstract |
25年度の間、本研究の背景となる「文化変容(アカルチュレーション)」を中心に研究を進めてきた。これは修士課程では直接触れなかったテーマであるため、その概念の基礎知識を論理的な部分からつかめるようにして、またそれを戦前・戦時中のブラジル在住の日本人移民に当てはめて考え始めた。 そして、具体的に言えば(日本人移民に限らず、20世紀の間にブラジルに入国した欧州・アジアからの集団移民をより深く理解するのに不可欠と思われる)「宗教と移民」というについて研究を行い始めた。ブラジル社会において独特な社会的評判や思想的権威をもつカトリック教会は日本人移民の生活水準の向上やブラジル社会への適応を目指し、積極的に、また様々なレベルにおいて働きかけたことが明らかになった。例えば、戦時中、敵国人として扱われていた日本人移民が日本語をはじめとする「自文化」を放棄せずに、「他文化」であるブラジルに適応することがカトリック教会によって促されたことがその一つの例である。そのため、社会適応の観点から見れば、カトリック教会が日本人移民とブラジル社会との架け橋のような存在となり、移民の永住化につながったと言えよう。 また、カトリック教会と日本人移民の関係を研究することによって、戦後のブラジル日系社会における「勝ち負け抗争」の和解にも役立ったとされる「アジア救援公認団体(通称LARA物資援助)」や日本人移民の異文化適応・永住化プロセスに関する今後の研究への手助けになることが期待される。 さらに、宗教という範疇のみならず政治政策、教育、文化、経済、社会福祉など、移民に対してカトリック教会は具体的にどの分野で、どのように働きかけたかを分析している最中である。戦前、日本における軍事化と、ブラジルにおける反移民論が激化しつつある時代に、両国のナショナリズムに対してカトリック教会はどのように反応したか、さらに日本とブラジルのカトリック教会は移民の送出や受入に対してどう考えていたかについて、今後も考察し続けたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨夏、ブラジル・サンパウロ市研究調査を行った際、戦時中ブラジル在住の日本人に関する史料を充分収集でぎたので、その分析が順調に進んでおり、今年度に学術雑誌に小論文の形で投稿できることと思われる。 なお、研究成果を学術論文の形でまとめるのに予想以上に時間がかかり、雑誌投稿や発表は一件もなかったことを反省しているので、今年度中に投稿できるように努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
毎月東京で行われているブラジル日本移(勝ち負け抗争)勉強会にほぼ毎回出席しており、そこで様々な大学教員や若手研究社と勉強をさせてもらい、アメリカ大陸の他の国への日本人移民とブラジルの日本人の比較研究を行い、移民の成功事例として指摘される「ブラジル日本人移民」の今日的意義を考え、現代の移民・難民問題につながるような研究を進めていきたい。
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