2014 Fiscal Year Annual Research Report
ブラジルにおける日系人の「祖国」意識の維持と変化-「臣道聯盟」を事例として-
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13J00222
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新谷 光アルベルト 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブラジル移民 / アカルチュレーション / 臣道聯盟 / 日系人 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年4月、ブラジル・サンパウロ市にある様々なアーカイブでおこなった研究調査に基づいて執筆した論文が、去る3月に『移民研究年報』(日本移民学会発行)に掲載されることになった。この論文の内容は第二次世界大戦前に日本政府がどのようにカトリック教会と連携し、海外移民政策を実行したか、という近年の移民研究の対象にほとんどされてこなかったテーマを取り上げ、史料分析を通して明らかにしたのである。そのために、日本語のみならず、英語、ポルトガル語、フランス語で書かれた文書を使用した。また、外交間(国家間)レベルにとどまらず、日本・ブラジル両国で移民事業に携わった個人のレベル(政治家や宣教師)まで掘り下げ、日本政府とカトリック教会との関係を考察するに至ったのである。 本研究は移民研究とはいえ、その一つのキーワードである「acculturation(文化変容)」を考える際に、移民政策や労働問題といったハード面の他に、移民個々人の精神面(教育、家族意識、宗教、文化水準、コミュニティー形成、移民の文化表現、愛国心、永住率など)を考えることも不可欠であると思われる。しかし、後者は日本における移民研究ではマイナー分野であるため、本研究は特にブラジルにおける日本移民のソフト面、つまりブラジルにおける日本人移民のアカルチュレーション問題に焦点を当てることとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目(平成25年度)は予定より資料収集が多少遅れたが、2年目(平成26年度)の間はそのペースを取り戻し、予定通りに進んでいると思われる。 なお、本研究の題名にもある「臣道聯盟(しんどうれんめい)」を具体的な事例として取り上げるのが当初の目的だったが、現時点ではその組織・社会運動に関する一次史料が極めて少なく、史料入手が困難である。その意味で本年度の間、もう少し徹底的に資料収集を実施する予定だが、万一充分な史料が見つからない場合、別の事例を考える必要があるのかもしれない。いずれにせよ、本研究のテーマは変わらず、予定通りに本来の研究目的に達することができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は概ね予定通りに進んでいると思われる。今年度(最終年)の間は特に、ブラジルにおける日本人移民の「アカルチュレーション(文化変容)」に焦点を当てて研究を進めたい。戦前、ブラジルに渡った日本人がどのように現地社会に溶け込んだか、また具体的にどの分野(教育、政治、美術など)でその活躍が目立ったかを考察したい。 また、第二次世界大戦終戦までの期間に絞り、ブラジル在住の日本人は祖国日本に対してどのような意識を持っていたか、そしてその意識が時間が経つにつれてどのように変わったかを考えてみたい。 最後に、2015年は日本ブラジル外交関係樹立120周年であるため、本研究を通してより充実したアウトリーチ活動を行うことができると期待している。
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Research Products
(1 results)