2013 Fiscal Year Annual Research Report
味覚修飾タンパク質ネオクリンのpH変化に伴う甘味発現機構の解明
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13J00232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小泉 太一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 甘味タンパク質 / NMR / 甘味受容体 |
Research Abstract |
味覚修飾タンパク質ネオクリンがpHに依存して甘味強度を変化させる仕組みについて、構造化学の観点からしらべた。このタンパク質は中性でほのかな甘味を感じさせる一方で、酸性では強烈な甘味を感じさせるという、ユニークな性質をもつ。ネオクリン分子がpHに依存して「ほのかに甘い」状態から「甘い」状態へと変化する仕組みを明らかにすることは、甘味受容体による甘味受容機構の解明の一助になると予想している。とりわけネオクリンを含めた甘味タンパク質の受容機構は十分に解明されておらず、その受容機構について新たな知見を獲得して応用することができれば、未知の低カロリー甘味物質の開発への道も拓き得ると考えている。 1. NMR法を用いてネオクリン分子のpHに依存した立体構造変化の解析をさらに進めた。その結果、中性および酸性においてネオクリンの甘味強度決定に寄与していると予想されるアミノ酸残基の候補を14個まで増やすことができた。 2. 中性および酸性においてネオクリンの甘味強度を決定しているアミノ酸残基を明らかにするため、上述の14個のアミノ酸残基について点変異体解析を行った。各アミノ酸残基について大腸菌を用いて点変異体を作製し、中性と酸性それぞれでの甘味強度をしらべた。その結果、中性および酸性での甘味強度決定に寄与しているアミノ酸残基をそれぞれ4つ検出できた。中性と酸性、両方の甘味強度に著しい影響を与えるアミノ酸残基は検出されなかった。また2種類のアミノ酸残基群は、タンパク質分子上で別々の表面領域に集合していた。これよりネオクリンは、中性と酸性では異なる分子表面領域を中心として甘味受容体と相互作用していることが示唆された。中性と酸性ではネオクリンと甘味受容体との結合様式が異なることで、甘味の強さに著しい差が生じると考えられる。 今後は、中性および酸性におけるネオクリンと甘味受容体との相互作用様式をしらべていくつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネオクリンをはじめとする味覚修師タンパク質は、中性で「ほのかに甘い」状態をとる一方で、酸性では「とても甘い」状態へと変化するユニークな性質をもつ。ただし、二状態間において甘味受容体との結合様式が異なるのか、それともほとんど変化しないのかといった構造化学的な部分は、十分に理解されていなかった。本研究により、ネオクリンは中性と酸性では異なる分子表面領域を中心として甘味受容体と相互作用することを実験的に示すことができた。ネオクリンが中性と酸性で甘味強度を著しく変化させる分子機構について、一つの新たな知見を獲得することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ネオクリンと甘味受容体との相互作用様式について、中性と酸性でどのように変化しているかを検証する。甘味受容体を発現させたヒト培養細胞を利用した甘味強度評価系を利用することを計画している。ネオクリンによる甘味受容体の活性化能、および他の甘味物質との甘味受容体活性化機構の違いなどについて、中性・酸性の両pHにおいて詳しくしらべていく。またネオクリン様の一次構造および立体構造をもつホモログタンパク質を利用して、ネオクリンの構造活性相関をしらべていくことも計画している。
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