2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00233
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
萩生 翔大 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 運動制御 / 筋シナジー / 表面筋電図 / ニューラルネットワークモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は,膨大な自由度を持つ運動制御システムの冗長性を簡略化するための戦略として提唱されている,筋シナジーという概念の解明に向け研究を行ってきた.昨年度はまず,これまでに行ってきた研究の解析を進め,更に考察を深めた.その結果,以下の3つの研究内容が論文として国際誌に採択された. (1)関節角度の変化に伴う筋の力発揮能力の変化に対して,中枢神経系は既存の筋シナジーを個別にまたは融合して動員することによって,柔軟かつ安定した力発揮を可能としていることが明らかとなった.この研究は,国際誌Journal of Neurophysiologyに採択された. (2)歩歩行と走行は,同じ筋シナジーの動員のタイミングを変化させることによって制御されることを示した.さらに,相転移に関して,移動速度の変化に伴う自然発生的な相転移はこのタイミングを徐々に変化させ,また,実験者の合図等によって被験者が自発的かつ瞬時に行うような相転移はこのタイミングを瞬時に変化させることによって達成されることが明らかとなった.この研究は,日本運動生理学会にて発表し,若手研究奨励賞を受賞した.また,国際誌Frontiers in Human Neuroscienceに採択された. (3)これまで概念とされていた筋シナジーの活動が終端位置での力の制御に直接貢献していることが明らかとなった.この研究は,国際誌Experimental Brain Researchに採択された. また,昨年度は筋シナジーを含めた神経回路モデルを構築し,運動学習における筋シナジーの機能的意義について明らかにした.筋シナジーを含めないモデルと力場への適応速度を比較したところ,筋シナジーモデルにおいて学習速度が上昇した.筋シナジーは,主に二関節筋の存在による筋骨格システムの固有の偏りを補正することで,運動学習速度の向上に貢献していることが理論的に示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
筋シナジーに基づく筋の冗長性制御則の解明を研究目的している申請者の研究に関して,昨年度は3つの研究内容が国際誌に採択された.国内外の数多くの学会で発表し,多くの研究者と議論を交わしたことや,データの解析方法や解釈について再度吟味し,研究内容をさらに洗練させたことが,国際誌への採択に繋がったと考えられる. また,当初は生理学実験を通して筋シナジーに基づく運動制御則の解明を計画していたが,生理学実験およびデータの解析が順調に終了したことにより,さらに数学的手法を用いた研究を進めることができた.神経回路モデルを作成して筋シナジーとそれを取り巻く神経システム内の内部環境との関係性を捉え,運動学習における機能的意義を明らかにした.本研究の解析は大部分が終了しており,現在国際誌に投稿する準備を行っている. 以上の理由より,当初の計画以上に研究が進展しており,今後もさらなる研究の成果が期待できる状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている,神経回路モデルを用いて計算論的に筋シナジーの機能的意義を解明する研究に関して,今後は様々な学習状況を再現したシミュレーションを計画している.例えば,神経回路のある部位が損傷した時の機能回復に関して,筋シナジーがどのような機能的意義を持つのか,またその際,どのような機序で学習されていくのかについて解明していきたいと考えている.この研究は,運動制御における筋シナジーの機能的意義の解明と言う学術的な意義を持つだけではなく,現在日本だけでも10万人以上いるとされている脊髄損傷者の機能回復や補助装具の開発にも寄与することが期待される. さらに,上記研究と平行して,筋シナジーをより微視的な視点で捉え,筋シナジーの形成機序に焦点をあてたモデルを構築し,神経基盤としての筋シナジーの存在を解明する研究を行うことも計画している.本年度は,このモデルを用いた計算論的なアプローチおよびそれを検証する生理学実験によって,筋シナジーに関する知見を深めていく予定である.
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Research Products
(8 results)