2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世における中国音楽研究-『律呂新書』を中心として-
Project/Area Number |
13J00235
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
榧木 亨 関西大学, 東アジア文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 『律呂新書』 / 朱子学 / 楽律論 / 日本近世 / 朝鮮王朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度から実施してきた日本における『律呂新書』研究の基礎的な分析を完成させるとともに、日本近世期に行なわれた中国音楽研究という新たな枠組みのなかで検討を行なった。また、朝鮮王朝における『律呂新書』研究の資料収集および分析にも着手した。 前者については、『律呂新書』を象数易学の観点から分析した内堀英長を取り上げたことにより、前年度から実施してきた中村惕斎に端を発する日本における『律呂新書』研究の展開過程を明らかにした。 後者については、まず、朝鮮王朝時代に実施された『律呂新書』研究に関する著作を収集し、研究対象となる資料の選定を行なった。次に、日本と朝鮮王朝の比較研究の第一歩として、日本における『律呂新書』研究の基礎を構築した中村惕斎と、同時期の朝鮮王朝において『律呂新書』研究を行なっていた李息山を取り上げて比較を行なった。その結果、中村惕斎の研究が基礎的なものであるのに対して、李息山の研究は易学にも注目した発展的なものであり、日本では内堀英長に相当することが明らかとなった。そこで、朝鮮王朝における『律呂新書』研究の展開過程を明らかにすべく、韓国の研究者による先行研究と『朝鮮王朝実録』を手掛かりに分析を試みた。その結果、第四代国王である世宗期に実施された雅楽整備の過程で、『性理大全』に収録されていた『律呂新書』が朱子学を代表する楽律論として、雅楽整備を行なう際の典拠として重視されていたこと、そして、正しい楽律を確定する方法として、候気が継続的に実施されていたことが明らかとなった。 以上のように、本年度は日本における『律呂新書』研究の基礎的研究を完成させるとともに、朝鮮王朝における『律呂新書』研究についても分析を展開した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、日本における『律呂新書』研究の展開過程を解明するとともに、朝鮮王朝における『律呂新書』研究の様相についても分析を行なった。 前者については、前年度の研究計画の最終段階に位置するものであるが、本年度に内堀英長に関する分析を行なったことにより、完成させることができた。これにより、前年度の積み残しを解消することができた。 後者については、本年度の主たる研究目的であるが、研究対象となる著作の収集がおおむね完了したこと、また、朝鮮王朝前期における『律呂新書』の受容過程と、その後の展開についても検討を行なうことができたため、当初の計画をおおむね達成することができた。とりわけ、朝鮮王朝における『律呂新書』研究については、『朝鮮王朝実録』等の歴史資料と韓国の研究者による先行研究を併用したことにより、朝鮮王朝における『性理大全』の受容と『律呂新書』研究の関係、世宗朝に実施された雅楽整備における『律呂新書』の役割等について分析を展開することができた。本年度の成果については、論文・学会発表などを通して幅広く公表した。 以上のことから、本年度に実施した研究は、おおむね研究計画に従い実施することができたものと判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでの成果をもとに、日本における『律呂新書』研究の意義について検討を行なう。そのため、日本における『律呂新書』研究の展開過程を分析する上で検討した儒者たちの著作に着目し、楽律論研究だけではなく、広く楽に関する著作の分析を通して、楽律論から楽論へと展開していく過程を明らかにしたい。また、内堀英長において顕在化した『律呂新書』と象数易学の関係性に着目し、同じく『律呂新書』を象数易学の観点から分析する傾向が見られる中国・明代の李文察らの著作、朝鮮の李息山らの著作との比較を通して、内堀英長が行なった『律呂新書』と象数易学を関連付けた研究の相対化を試みる。 また、本研究課題は次年度が最終年度となるため、これまでの成果を総合し、「日本近世における中国音楽研究-『律呂新書』を中心として-」という本研究の課題に対して、一定の解答を提示したい。
|
Research Products
(8 results)