2013 Fiscal Year Annual Research Report
高速点火慣性核融合ドライバー高出力化のための低温冷却回折格子の開発
Project/Area Number |
13J00275
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三上 勝大 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | レーザー損傷 / 光学素子 / 温度依存性 / 回折格子 |
Research Abstract |
光学素子にレーザー光が照射した際に生じる破壊現象(レーザー損傷)の破壊閾値(レーザー耐力)温度依存性を、4種類の異なるパルス幅のレーザー光を用いて評価した。ナノ秒パルス幅では低温条件になるほどレーザー耐力が向上する温度依存性が確認され、パルス幅が短くなるにしたがって温度依存性が弱くなり、数ピコ秒で温度依存性が逆転することを明らかにした。この結果はレーザー損傷機構の各理論により考察することで、レーザー耐力の温度依存性が生じる原因を明らかにし、キーパラメーターを示すことができた。この成果は、レーザー装置に使用される光学素子の1つである回折格子の製作においても、低温条件化でレーザー耐力がより向上する材料を選定する際に非常に重要となる指針を与えるものである。併せて、キーパラメーターである電気抵抗率を実測定し、実験的に検証するための評価装置の準備を継続している。また、光学素子の分光特性を異なる温度条件化で評価を行った。光学素子温度が変化することにより屈折率変化や熱膨張による体積変化により光学設計が変化し、設計通りの光学特性が得られない懸念があったが、液体窒素温度の冷却では影響を与えるほどの光学特性変化が生じないことを明らかにした。この成果により、開発する回折格子は室温条件化で最適化された光学設計を使用することがわかった。しかしながら、光学素子温度が変化するに従い、赤外光領域の水およびOH基の吸収が変化した。これは光学素子温度の変化により、当該物質の吸着・脱離が生じていることを示す。当該物質はごく僅かにレーザー光の吸収を変化させる可能性があり、レーザー耐力を変化させることが懸念される。微少なレーザー光の吸収とレーザー耐力の関係性を明確にしなければならない、新たな問題点を指摘した。現在、熱偏向法を用いたレーザー光の微少吸収を評価する実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたレーザー耐力温度依存性が生じる主要因を実験結果から理諭的に明らかにすることができた。当初の予定では主要因を特定するのみだったが、電気抵抗率測定装置の準備に遅延はあるが本年度の成果により、来年度に実証実験とすることが出来る。また、来年度予定していた異なる温度条件化における分光特性評価を、前倒して今年度実施することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザー耐力の温度依存性において主たるパラメータとなる電気抵抗率とレーザー耐力の関係性を実験的に検証し明らかにする。また、光学素子温度変化によって環境物質の吸着および脱離によって生じると考えられる微少なレーザー光の吸収とレーザー耐力の関係を明らかにする。併せて、低温冷却条件化における回折格子の回折効率の評価を行う。
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Research Products
(7 results)