2014 Fiscal Year Annual Research Report
コーヒー由来生理活性物質による運動時の骨格筋代謝活性化
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13J00300
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津田 諭志 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カフェイン / コーヒー / 運動 / 骨格筋 / AMPキナーゼ / 糖代謝 / 筋収縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋収縮時の骨格筋AMPキナーゼ(AMPK)活性化、及びインスリン非依存性糖輸送活性に対してカフェインが及ぼす影響の分子メカニズムに関する検討を行った。ラット単離筋インキュベーション系を用いた検討でテタヌス収縮時の発揮張力を測定したところ、カフェイン(3 mM)存在下でテタヌスを惹起した群では、カフェイン非存在下での群と比較して収縮による発揮張力の減衰が緩和された。また骨格筋におけるカフェイン取り込み活性測定では、カフェインの細胞内濃度はインキュベート開始後30分までに緩衝液中濃度を超えるレベルに上昇することが観察されたが、筋収縮の有無による影響は受けなかった。以上の結果から、カフェインは収縮時骨格筋の疲労を軽減し、細胞内のエネルギー状態をより低下させるメカニズムを介して筋収縮によるAMPK活性化を促進する可能性が示唆される。一方、AMPKと同じく骨格筋代謝に関与する主要な情報伝達分子であるAktはテタヌス収縮により活性化されたが、その活性はカフェインにより完全に阻害された。カフェイン同様コーヒー由来生理活性物質であるカフェ酸(1 mM)、クロロゲン酸(1 mM)は、いずれも収縮誘導性AMPK活性、及びAkt活性に影響を与えなかった。また、カフェイン(60 mg/kg)を腹腔内投与し、麻酔下で坐骨神経に通電し収縮を惹起させる方法を用いた生体での検討においても、カフェインによる収縮誘導性骨格筋AMPK活性、インスリン非依存性糖輸送活性の増加、及びAkt活性の抑制が観察された。さらに骨格筋の細胞内Ca2+濃度の指標であるCa2+/calmodulin-dependent protein kinase II(CaMKII)もカフェインとテタヌス収縮の併用により相加的な増加が観察され、併用刺激群におけるカフェインの相加的効果に細胞内Ca2+濃度の変化も関与している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収縮時の骨格筋AMPK活性化、及びインスリン非依存性糖輸送活性に対するカフェインの相加的効果のメカニズムについて、テタヌス収縮時の発揮張力の減衰(筋疲労)がカフェインにより緩和されることにより、細胞内のエネルギー状態がより低下するメカニズムを介していることが明らかになったことに加えて、単離骨格筋をカフェイン存在下でインキュベートすることで、カフェインの細胞内濃度はインキュベート開始後30分までに緩衝液(α-MEM)中濃度を超えるレベルに上昇すること、またそれが筋収縮の有無に影響を受けないことなど、これまでに報告されてこなかった新規性の高い重要な知見が得られた。さらに、骨格筋の細胞内Ca2+濃度の指標である CaMKII についても、カフェインと筋収縮の併用により相加的に活性が亢進することを明らかにした。一方、収縮誘導性Akt活性がカフェインにより阻害されることも、単離骨格筋インキュベーション系を用いた実験だけでなく、カフェイン生体投与実験においても明らかにした。以上のことから、研究がおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
収縮誘導性AMPK活性、インスリン非依存性糖輸送活性、及びAkt活性に対してカフェインが与える影響について、ラット単離骨格筋インキュベーション実験系だけでなく、生体投与による実験においても同時に検討を行い、その結果に乖離も認められなかった。今年度は、インスリン非依存性糖輸送活性におけるカフェインと筋収縮との相加作用に対するAMPK、およびCaMKIIの関与を明らかにする。具体的には、AMPK阻害剤であるdorsomorphin やCaMKII阻害剤であるKN-93、あるいは筋小胞体Ca2+放出阻害剤であるdantrolene などを使用した検討を予定している。また、筋収縮誘導性Akt活性に対するカフェインの阻害効果が、Aktに関連する生理作用(インスリン依存性糖輸送促進、グリコーゲン合成促進など)に及ぼす影響を検討するとともに、Aktの上流分子(phosphatidylinositol 3-kinase、insulin receptor substrate-1、insulin receptor)の活性変化を検討し、そのメカニズムを明らかにしていく。
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Research Products
(13 results)