2013 Fiscal Year Annual Research Report
モーリス・メルロ=ポンティの哲学における「表現」の問題
Project/Area Number |
13J00364
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八幡 恵一 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | メルロ=ポンティ / 現象学 / 言語学 / 表現 / フランス |
Research Abstract |
モーリス・メルロ=ポンティの哲学を、とりわけ「表現」という概念に着目して読解し、その思想的な一貫性と新たな意義を探るというのが、本研究の目的である。そのさい、以下の三つの方向性を設定し、段階的に研究をすすめていく。 1、「表現」の概念のさらなる探求と深化 2、「表現」の概念にもとづいた後期思想の研究 3、「表現」の概念にかんするベルクソン哲学との関係 本年度に実施されたのはこのうちの1であり、すなわち、メルロ=ポンティの「表現」の概念にさまざ! まな角度から考察をくわえ、より深い次元でとらえるというのが、本研究で予定された最初の課題であった。この課題はほぼ達成され、2013年度に発表された二本の論文および一本の学会発表において、その成果が公表された。そこでは、エマニュエル・レヴィナスというメルロ=ポンティと同時代のフランスの哲学者や、ドイツの現象学者であるオイゲン・フィンクの思想との比較、さらに1950年代の著作、『世界の散文』における他者の理論の分析をつうじて、メルロニポンティの「表現」の概念の探求と深化をこころみ、いずれも満足のいく結果がえられた。 「表現」はメルロ=ポンティの中期の思想に特有の概念だが、初期や後期にくらべて、中期の思想はこれまでの研究でも解釈が定まっておらず、本研究はこれを「表現」概念の体系的な考察をおこなうことで補てんし、中期思想の真の意義を明確にするものである。 ところで、本年度はこのような探求と深化にくわえて、さらに「表現」の概念の普遍化と応用可能性の検討を目的のひとつとしていたが、これにかんしては主軸となる視点と方法が定まらず、完全には達成できなかった。上記2および3の課題に追加し、次年度以降にあらためて実施したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進行そのものは滞りなく、本年度に予定されていた課題(メルロ=ポンティの「表現」の概念の探求と深化)もほぼ達成されたが、最終的な目的としていた「表現」概念の普遍化と応用可能性の検討については不十分であり、次年度以降に延長して実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に変更はなく、当初の予定どおり、次年度は「表現」の概念を主軸としたメルロ=ポンティの後期思想の研究をおこなう。しかしそれと同時に、本年度に十分な成果をあげることのできなかった、「表現」概念の普遍化と応用可能性の検討についても、次年度の課題のひとつにふくめる。
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Research Products
(3 results)