2013 Fiscal Year Annual Research Report
送粉動物の学習行動を介した花の多様な形質進化 : 花色変化パターンの種間差に着目して
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13J00371
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 美季 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 花色変化 / 訪花昆虫 / 学習行動 / タニウツギ属 |
Research Abstract |
先行研究より、花の色を劇的に変える「花色変化」には、訪花昆虫に蜜が多い花を教えることを通じ、ハナバチのリピーターから好かれる効果があることが示唆されている(Suzuki & Ohashi 2014)。一方で、花の維持や色素生産にかかるコストを抑える点では、花が変色しない植物のほうが優れている可能性がある(Suzuki & Ohashi 2014)。このことをふまえると、ハナバチのリピーターが頻繁に訪れる環境では、花色変化の利益がコストを上回るため、花色変化する植物(以下、変化型)が集団中に広まりやすいことが予想される。一方、学習能力が高い昆虫種が少なく、かつ光合成の生産性が低い環境では、コストの抑制が可能な花色変化しない植物(以下、不変型)のほうが適応的となるかもしれない。この予想を確かめるために、野生のニシキウツギ(変化型)とその近縁種タニウツギ(不変型)の自生地において調査を行った。 まず、訪花昆虫の種構成を比べると、不変型では小型ハナバチ・アブ・甲虫が8割を占める一方、変化型よりもマルハナバチの割合が有意に低かった。次に、訪花昆虫にマークをつけて再訪問率を調べた結果、変化型ではマルハナバチの再訪問率が高かった一方、不変型ではこの昆虫の再訪問率はほぼ0であった。また、小型ハナバチやアブの再訪問率はどの植物でも低い傾向があった。以上の結果から、変化型はマルハナバチのリピーターにより依存している一方、不変型は再訪問率が低い昆虫に依存していることが分かった。このように、昆虫種ごとの再訪問率を明らかにし、そして同じマルハナバチであっても植物種間で再訪問率が異なることを示した研究は世界初である。以上の成果は日本生態学会(2014年3月)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度のあいだに、国際誌に投稿できる論文1~2本分に相当する成果が得られた。研究計画に記した項目(利益、コスト、送粉環境)のうち、コストに関する研究を除けばいずれも仮説を支持するデータが得られている。また、花の維持コストに関わるデータの一部(花の寿命など)は既に採取されており、現在研究室において結果をまとめている。平成25年度の交付申請書に記載された研究目的を全て達成できるという見込みから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、筑波・日光・水上・仙台における送粉昆虫相の調査をおこなう。また、植物の自生地における光環境の比較を行い、花色変化する種は光合成にとってより好適な環境に生育していることを確かめる。平成25年度に採取した未発表のデータ(花の維持コストの指標、結実率、植物相)と合わせて1~2本の論文にまとめ、国際雑誌に投稿する。
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Research Products
(6 results)