2013 Fiscal Year Annual Research Report
戦後少女雑誌における恋愛至上主義の成立過程について
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13J00384
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日高 利泰 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 雑誌 / 読者 / マンガ / 性 / メディア史 / 文化史 |
Research Abstract |
毎日新聞が実施する「学校読書調査」のデータを用いて各雑誌読者層の推定作業を進めた。経年比較が可能なデータ形式になる第2回調査の1955年から2005年までの50年間を分析対象期間とし、なるべく多くの雑誌を対象として比較検討した。具体的には「幼年誌」とカテゴライズされる『りぼん』『なかよし』や少女向け週刊誌として早くに創刊された『週刊マーガレット』『週刊少女フレンド』に加えて、『週刊セブンティーン』等の高校生以上向け雑誌や『小学一年生』等の学習雑誌等を分析対象雑誌とすることで、戦後の子供文化・若者文化をより総体的に把握することを目指した。これらの研究成果を日本マンガ学会第13回大会において「『学校読書調査』を利用した読者像の推定」(2013年7月6日、北九州市漫画ミュージアム)として発表した。 上記のような読者層の推定とは別に、戦後の少女雑誌の中での性的な情報の導入経路として「生理」に着目雑誌記事・マンガ作品の分析を行った。少女マンガにおける「性的身体」の表象は、従来の研究においてはマンガ表現論の枠組みから、すなわち表現の自律的なシステムとして「内面」や「心理」を描きうるための基礎となるものと位置付けられてきた。しかし、こうした前提をメディア論的な枠組みから捉え直す場合、むしろ「性的身体」と「内面」とを結びつけることが自明視されるような読みのコードの成立こそが問題になる。多くの先行研究では1970年代の少女マンガにおいて「性」が登場することが作家性や時代精神と安易に接続され、特権的な作品として語られてきた。しかし、そうした作家性の発露として語るような立論の形式自体が、マンガ文化をカウンター・カルチャーとして位置付けようとする特定の時代ないし特定の世代に強く規定された被拘束的なものであり、それ以前にそうした語りを可能にするような条件整備が全く別の要請からなされていたということが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「少女マンガ雑誌」とされる各雑誌の読者層について戦後50年間を通じた経年変化を跡付け、男女絶・年齢別の雑誌カテゴリの序列化・自己組織化の様態を明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
読者の問題については少年誌との比較も視野に入れつつ引き続き資料の整理と分析作業を行う。少女雑誌における性的情報の取り扱いの変化については、戦前期の雑誌の比較も行いながら、戦後期とりわけ1960年代におけるメディア環境の変化に関してその様態を明らかにする。
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Research Products
(1 results)