2014 Fiscal Year Annual Research Report
戦後少女雑誌における恋愛至上主義の成立過程について
Project/Area Number |
13J00384
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日髙 利泰 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | マンガ / 教育 / 雑誌 / メディア史 / 文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
対象期間は1950年頃から1970年代までを中心とし、『教育』『児童心理』等の教育系雑誌に登場するマンガ関連の論考を比較検討する作業を進めた。これは教育界からのマンガに対する視線のありようを明らかにすることを課題としたものである。戦後の子供文化・若者文化をより総体的に把握するためには、コンテンツそのものやその消費主体の当事者的な意識だけでなく、外部の視線のような環境要因を考慮しなければならない。論説の担い手やそこで語られる内容に関しては、戦前から児童文化研究を推進していたグループから戦後の大学教育を受けた世代への世代交代が1960年代中頃に起こり、マンガそのものの変化もあいまって環境の劇的な変化がもたらされたと考えられる。これらの研究成果を日本マンガ学会第14回大会において「教育誌の論説にみるマンガ観の変容」(2014年6月28日、京都精華大学)として発表した。 上記のようなマンガ文化をめぐる環境の研究とは別に、戦後の少女雑誌の中でのキスシーンに着目した雑誌記事・マンガ作品の分析を行った。家族的な親密性を表現するために導入されたキスシーンは、徐々に用例を拡大しつつそれを描くこと自体が既成事実化され、次第に少女マンガのなかではとりたてて珍しくないものへと変貌していく。こうした変化は1963~64年ごろに集中して起こった。このときの少女マンガ雑誌の主要な読者層は小学校の高学年程度であった。これは従来云われてきた、マンガ文化・メディア環境は受容者・消費者たるベビーブーマー世代(団塊世代)の成長にあわせて変化してきたという定説に対して再考を促すものである。また一連の変化において、男性作家の果たした役割が大きかった点も明らかになった。以上の内容は『セクシュアリティの戦後史』(小山静子・赤枝香奈子・今田絵里香編、京都大学学術出版会、2014年7月)所収論文として刊行された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マンガ文化の外部環境としての教育界からの視線に関して、従来から指摘されてきた戦前・戦中の児童読物統制との連続性だけでなく、そこから差異化しようとする世代間闘争的なアカデミズム界の問題として捉え直すことができたため。 また学会発表に加えて論文集の刊行、雑誌への寄稿など、研究成果の発表をより多角的に行なうことができたと考えられるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
雑誌研究の手法を用いて読者のジェンダーという観点から引き続き研究を遂行することに加え、用語法や概念史を援用しつつ少女マンガにおけるジャンルの生成に関して歴史的な実証と理論構築の高度な両立を目指す。
|
Research Products
(3 results)