2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00425
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伏見 裕子 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員 PD
|
Keywords | 出産 / 産屋 / 女性 / ケガレ / 産院 / 社会事業 / フールドワーク / ジェンダー史 |
Research Abstract |
平成25年度は、香川県伊吹島および三重県志摩市越賀地区における産屋の盛衰とケガレの変容に関する調査および研究を行った。 伊吹島には、8月26-27日および3月24-26日に現地で聞き取り調査や資料収集を行ったほか、1月31日には香川県立図書館および香川県立文書館において、過去の新聞記事と公文書収集を行った。また、9月11-12日に志摩市越賀地区にて聞き取り調査を行った。 そして、昨年度までに行った伊吹島の調査と8月の調査内容をもとに論文「島のお産から家族のお産へ―昭和20-30年代における伊吹島の出部屋と女性たち―」を執筆し、日本女性学研究会発行の『女性学年報』第34号(査読あり)に掲載された。これは、従来明らかにされてこなかった伊吹島の産屋(出部屋)の衰退過程と島のケガレ観の変容に迫ったものである。伊吹島の女性たちにとって、漁師の船霊信仰に基づくケガレ観から、産屋を利用するのは当たり前のことであったが、そこには様々な矛盾と複雑性があり、船霊信仰の衰退や出産の医療化、病院化という個々の要因が直ちに出部屋の利用を阻むことはなかった。そのような中で徐々に島の女性が出部屋を利用しなくなったのは、生業の変化に伴う家族形態および家族関係の変容により、個々の家族の事情がケガレ観より優先されるようになったからである。 また、昭和戦前期の出部屋が社会事業の産院として国家や皇族から助成金を得ていたことに関連して、日本における社会事業の産院がいかにして成立し、社会的意義を獲得したのかということを解明し、5月11日の社会事業史学会若手研究者研究交流会において報告を行った。また、公益財団法人世界人権問題研究センター研究第4部(女性の人権)のフィールドワーク(産屋調査)に関わる事前学習として「三重県志摩市越賀の産屋について」という報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に記載した通り、聞き取り調査を通じて産屋の盛衰過程を明らかにし、それによって女のケガレの変容メカニズムを解明するべく研究を進めた。その過程で、計画段階では予期していなかった生業の変化とそれに伴う家族の変容という要素が産屋とケガレ観のありように深くかかわっていることが判明した。したがって、当初の計画以上に研究が進展していると評価することができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画通り、平成26年度は寺院および神社周辺の産屋とケガレについて調査・研究する。加えて、香川県伊吹島の産屋(出部屋)とケガレにっいてさらに掘り下げた調査・研究を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)