2014 Fiscal Year Annual Research Report
形容詞の普遍性と多様性に関する認知的・類型論的研究
Project/Area Number |
13J00431
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅谷 友亮 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 形容詞 / 認知能力 / スケール / 認知言語学 / 実験意味論 / コーパス言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度に設定した、形容詞の意味構造に関わる3つの観点「結合性、スケール性、時間性」の内、結合性とスケール性に焦点を当て、内省に基づき深化させつつ、実証研究を行った。 まず、結合性に関しては、名詞との結合の際に形容詞が名詞に対して要求を行うという仮説の基、その要求を理論的に推測するために、言語資料を利用して形容詞の共起名詞のカテゴリーを定量的に明らかにした。その結果、形容詞ごとに集中する名詞カテゴリーの重要な偏りがみられ、形容詞ごとの要求が推測されるに十分であることを示した。さらに、形容詞の要求を明らかにすることで、比喩的な拡張関係にある意味を有意義に弁別させることが可能であることがわかり、それを含め、要求からの不一致によって修辞的効果の説明の一部になることを示した。 次に、スケール性に関しては、前年度重点化し明らかにした尺度フレームを構成する要素のうち、比較対象と基準(ノーム)に焦点を当てた。前者に関しては、比較対象の種類分け、記述、特徴付けを行った。後者に関しては、心理実験により、基本的基準位置の場所を特定すると共に、どんな要因によりどう変化するのか、またはどんな要因は変化を与えたないのか、を一部明らかにした。 形容詞は非常に主観的な要素、つまり、言語に表されない言語主体の心理に関わるため、コーパスの分析からの予測や直接的に心理実験によって意味構造に関わる形容詞の特徴を明らかにすることが求められると考えられ、先行研究においては不十分であることを研究を進めることができ、有意義であったと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、形容詞の意味構造の形成に関わる重要な認知的な働きを、データに基づき一部明らかにすることができ、本研究の主要な研究課題を達成できたと考える。一方で、研究対象は日本語が中心であり、他の言語において同様のメカニズムは働いているのか、差異があるのかに関するデータの収集は不十分であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、個別言語の分析を通して、形容詞の発話を動機づける様々な認知的な働きを実証的に明らかにしつつ、研究対象とする言語を広げ、今まで構築してきた理論との整合性をみながら、随時改訂を加える。
|
Research Products
(4 results)