2014 Fiscal Year Annual Research Report
狭線幅8eVファイバーレーザーによる超高分解能角度分解光電子分光の開発
Project/Area Number |
13J00432
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 遇哲 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 角度分解光電子分光 / ファイバーレーザー / 非線形光学結晶 / 超伝導ギャップ / 高次高調波 / 極低温 / 非従来型超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
銅酸化物や鉄系等の非従来型超伝導体における第一ブリルアンゾーン全体の超伝導ギャップ測定を可能にすべく、本研究課題で新たに励起エネルギー8 eVを有する高分解能レーザーを実用化し、本年度中に定常運転するレベルに引き上げた。 上記の通り安定した運転が可能となった高分解能レーザー光電子分光装置を用い、本年度は鉄系超伝導体Ba1-xKxFe2As2における超伝導ギャップ測定を行った。この系のうち、特にKオーバードープ領域(x=0.6-1.0)は超伝導転移温度が3 K - 15 Kと低く、分解能や到達最低温度の点で放射光では超伝導ギャップの精査が困難であったため、今まで7 eV励起のレーザーによる光電子分光によって超伝導ギャップ異方性が調べられてきた。7 eV励起の場合、ブリルアンゾーンの中心付近にいる3枚のホールフェルミ面において超伝導ギャップを精査することが可能であるが、励起エネルギーが足りないためにブリルアンゾーンコーナーにあるクローバー型フェルミ面の測定が出来なかった。非弾性中性子散乱ではブリルアンゾーン中心とコーナーを結ぶ波数にスピン揺らぎが観測されているため、スピン揺らぎが超伝導発現に起因するかどうかを調べることで、この系の超伝導状態の理解が進むことが期待される。そこで、本研究課題で定常運転可能となった8 eV励起の高分解能レーザーを用いた光電子分光を行い、Ba1-xKxFe2As2(x=0.88、0.93、0.97、Tc =4-12 K)のブリルアンゾーンコーナーにあるクローバーポケットでの超伝導ギャップを精査した。その結果、超伝導ギャップの異方性にKドーピング依存性があることが分かり、Kオーバードープ領域では特にスピンの揺動が超伝導状態に起因することが分かった。これらは放射光等の他光源では測定が困難なため、現状では本装置建設によってのみ達成される結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は鉄系超伝導体Ba1-xKxFe2As2のブリルアンゾーン端にあるクローバー型フェルミポケットにおける超伝導ギャップ測定を行った。超伝導ギャップを見積もるためには電子の状態密度を表すスペクトルをS/N良く取る必要があるが、昨年度はレーザー強度が弱かったために、長時間データをためる必要があり、測定中にサンプル位置が動く等の問題が存在していた。そこで、本年度はレーザー波長変換素子の温度調整機構の改良及び、ビームライン上に設置してあるレンズの安定性向上に努め、結果として昨年度比でデータ取得時の安定性が一桁程度上昇した。これは当初の予定を上回る成果であり、これによりBa1-xKxFe2As2の超伝導ギャップノードの波数位置を正確に決定することが出来るようになった。より具体的な内容を以下に記す。 Ba1-xKxFe2As2(x=0.88、Tc =12 K)のブリルアンゾーンコーナーにあるクローバーポケットでの超伝導ギャップを精査した。その結果、クローバーポケットにおける超伝導ギャップの異方性は、Kドープ依存性を顕著に示し、K = 0.88ではサイズ1.5 meV程度の等方的なギャップであったのが、K = 0.93 ~ 0.97ではサイズ0 - 1.0 meV程度の異方的なギャップが開くことが分かった。また、K = 0.93 ~ 0.97の試料において存在する超伝導ギャップノードの波数空間上での位置が、Kドーピング依存性を持つことも分かった。 以上の内容は当初の計画以上の進展による成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記内容に加えて、レーザーの偏光可変性を活かして鉄系超伝導体Ba1-xKxFe2As2の各フェルミ面における電子軌道の同定を行っており、その結果Ba1-xKxFe2As2のKオーバードープ領域では、ブリルアンゾーン中心付近のフェルミ面のうち同じxz/yz軌道成分をもつフェルミ面での超伝導ギャップと振る舞いが同一であることが明らかとなり、これにより、スピン揺らぎが超伝導発現に支配的な役割を示すことが明らかとなっている。そのため今後は特に超伝導ギャップと電子軌道の関係を精査することに研究の比重を移す。具体的には、上記の高分解能レーザー光電子分光装置を用いて、Ba1-xKxFe2As2のKエンド物質であるKFe2As2での超伝導ギャップ異方性の観測を行う。 またK = 88%ドープ測定時にクローバー型フェルミ面を形成するバンド(より正確にはホールバンドと電子バンドが混成してできたバンド)がフェルミ準位付近でフェルミノードを持つことも今年度の測定により分かっているため、この付近のKドープ量におけるフェルミ面のトポロジー変化が超伝導状態にどう影響するのかを調べるために、K=66%-88%ドープの試料におけるクローバー型フェルミ面でのEF位置の変化と超伝導ギャップ異方性の変化を精査する。 長期的にはFeSe等の他の鉄系物質についてスピン揺らぎの効果が超伝導に効いているかどうか等を同様に調べていく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Validation of the relation between spin fluctuations and superconductivity in holeoverdoped Ba1-xKxFe2As2 throughout the first Brillouin zone studied by quasi-cw 8 eV laser2014
Author(s)
H. Q. YAMAMOTO, K. OKAZAKI, Y. OTA, Y. ISHIDA, I. ITO, K. KIHOU, C. H. LEE, A. IYO, H. EISAKI, H. FUKAZAWA, Y. KOHORI, C.T. CHEN, S. WATANABE, Y. KOBAYASHI, S. SHIN
Organizer
International Conference on Strongly Correlated Electron Systems(SCES)
Place of Presentation
Campus Saint Martin d'Heres Grenoble, France
Year and Date
2014-07-07 – 2014-07-11