2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00451
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 かおる 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 花 / 送粉者 / 訪花性昆虫 / 花食者 / 雌雄差 / 雌雄異株植物 / 花蜜 / ヒサカキ |
Research Abstract |
花と花食性および送粉性昆虫との相互作用の中で、花の雌雄差がどのよりにして生み出されるのかを明らかにすることを目的に、雑居性雌雄異株植物ヒサカキを材料に、研究を進めている。 今年度は、ピサカキの花形質の雌雄差を明らかにするため、形態、花蜜に着目し、測定・分析を行った。その結果、雌花は雄花に比べ小さいものの、花蜜量が多く、花蜜糖度が高いことが明らかになった。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた分析により、花蜜には、スクロース、グルコース、フルクトースの3成分が含まれ、スクロースとグルコースの含有量が雌花で高くなっていることが分かった。 さらに、これら雌雄差のある形質が送粉者の誘因に与える効果を明らかにするため、野外観察を行った。その結果、花蜜量・糖度は訪花昆虫数と正の相関を示し、ヒサカキ雌個体では、花蜜量・糖度と種子生産量(結実率・発達種子率)に正の相関がみられた。一方、花の大きさと訪花昆虫数・種子生産量には有意な相関は見られなかった。 また、花食害が繁殖成功に及ぼす影響を調べるため、雌花において、人工的に花食害に似せた傷をつけ、結実率を測定した。その結果、傷付けた花の結実率は低く、ほぼ結実には至らなかった。このことは、受粉前の花食害が、受粉を妨げ、雌花の繁殖成功を大きく低下させることを示している。ヒサカキの花食害は蕾の時期からみられ、受粉前の花食害が最も多く観察されることから、花食者の存在は雌ヒサカキの繁殖成功度に大きく関わっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、花蜜量を含め、複数の雌雄差のある形質を明らかにし、その形質が送粉性昆虫の誘因に与える効果を明らかにした。また、花食性昆虫が雌植物の適応度に与える効果をも明らかにした。本年は研究の初年度であり、多くのデータを得ることが必要であったが、順調に調査が進んだと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はほぼ順調に進んでおり、これまでに得られたデータを解析し、その成果を論文などで公表する。と同時に、送粉性昆虫の行動実験なども含め、当初の予定通り、さらなるデータの収集にも努める。
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