2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00451
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 かおる 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 花形質 / 花食者 / 防御形質 / 送粉者 / 雌雄差 / ヒサカキ |
Outline of Annual Research Achievements |
花と花食性および送粉性昆虫との相互作用の中で、花の雌雄差がどのようにして生み出されるのかを明らかにすることを目的に、雑居性雌雄異株植物ヒサカキを材料として、研究を進めている。 本年度は、前年に続き、ヒサカキの花形質の雌雄差を明らかにするため、形態、花蜜に着目するだけでなく、花の匂いにも着目し、研究を行った。その結果、花蜜量は同一個体内でも時間帯により大きく変化するものの、雄花は雌花より花蜜生産量が少ないこと、雄花は雌花より大きいことが再確認された。匂いについては、解析中であるが、匂いの強さは花数とは相関がなさそうなこと、雄花のほうが雌花より強い匂いを出している傾向があることが分かってきた。 また、花の大きさと、花蜜の質は、送粉者の誘引に正の効果を持つことが、再解析の結果、明らかになった。この結果については、学会(Evolution2014, ESA 2014, 進化学会 2014)にて発表を行った。また、前述の花形質の雌雄差と合わせ執筆した論文原稿を再考しているところである。 これまで花食者の調査に伴い、経年、花の蕾のサイズを計測してきた。しかし、この蕾サイズが、蕾期の葯/胚珠、花弁、ガクのどの器官のサイズと相関があるのか、また、開花後の花のサイズと相関があるのかは明らかになっていなかった。そこで、蕾、花の形態計測を行い、形質間の相関の解析を行った。その結果、雌花では、蕾サイズと特定の蕾器官のサイズに相関は見られないものの、蕾が大きい花ほど、開花後の花も大きい傾向にあること、雄花では、蕾サイズはガクのサイズと相関はないが、花弁と葯のサイズと正の相関がみられること、雌花同様、大きい蕾ほど、開花後の花も大きい傾向にあることが明らかになった。 また、花食者数と花食害の程度も継続調査しており、各花形質と花食害の程度の関係の解析も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年の調査をもとに解析を進め、学会発表と論文執筆に取り組んだ。また、花の匂い分析をはじめ様々な調査も行っている。その結果、雌雄ともに、蕾が大きい花ほど、開花後の花も大きい傾向があることなどが分かった。これまで、花食は蕾の時期に生じるため、花食者の資源に関して蕾のサイズに焦点を当ててきた。しかし、上記の結果は、蕾のサイズが花食者だけでなく、開花後の花のサイズと正の相関があることで、送粉者の誘引を促進している可能性を示唆している。現在、野外実験の結果に基づいて論文を作成中である。以上の進捗状況により、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に関する主なデーターの収集はほぼ完了しているため、そのデータをもとに、今後解析を行っていく。また、その解析をもとに、追加実験などを行っていく。なるべく早く成果を公表できるよう、論文執筆や学会発表などに力を入れたい。
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