2013 Fiscal Year Annual Research Report
二重らせん超分子・高分子の創製と触媒的自己複製および不斉反応への応用
Project/Area Number |
13J00480
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
牧口 航 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 二重らせん / カルボン酸 / キラリティー / 不斉識別 / アミド結合 / 水素結合 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに、カルボキシル基を有しm-ターフェニル骨格を単位構造とするアキラルな共役高分子や二量体が、カルボキシル基の自己会合を介して、ラセミの二重らせん構造を形成することを見出している。また、光学活性なアミンを用いると、得られる二重らせんの巻き方向を制御出来ることも明らかにしている。本研究では、新たな巻き方向が制御された二重らせん分子の構築を目指し、光学活性なアミドリンカーを有するカルボン酸二量体を合成し、それらの自己会合挙動や会合体の構造について詳細に検討を行った。 光学活性なアミドリンカーを有するカルボン酸二量体を合成し、ラセミ体の^1HNMRスペクトルを重クロロホルム中で測定した。その結果、カルボン酸二量体はCDCl_3中で自己会合し、ホモキラルな会合体とヘテロキラルな会合体を2:1の割合で形成することが分かった。一方、リンカー部位のアミド結合の配列が異なるカルボン酸二量体を合成し、同様の検討を行ったところ、興味深いことに、極めて高い不斉選択性で自己会合し、ホモキラルな会合体のみを形成することが明らかとなった。さらに、単結晶X線構造解析を行ったところ、カルボン酸二量体はカルボキシル基とリンカー部位のアミド結合が分子間で水素結合を形成し, その結果、ユニークなホモキラルな二重鎖を形成することが分かった。また、二次元NMR測定より、いずれの二量体も溶液中で結晶中と同様の会合体を形成していることが示された。以上の結果は、新たな二重らせん分子を構築するモチーフとなり得るので、今後、不斉識別能や不斉触媒能を有する新規二重らせんを構築するための重要な指針になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、新たにキラルなカルボン酸二量体を合成し、それらの自己会合挙動について詳細に検討した。その結果、得られた二量体が分子鎖間の水素結合を介して、不斉選択的に二重鎖を形成することを見出した。以上の成果は、論文として投稿準備中であることから判断して、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、二重らせん構造に由来する不斉場を利用した、新規な不斉識別材料や不斉触媒の創製を目指し、キラルな1,2-ジアミノシクロヘキサンや有機触媒能を有するチオウレア等をリンカー部位に導入した二重らせん分子を設計・合成し、得られた光学活性二重らせん分子の不斉選択的な会合挙動や分子認識能、不斉識別能をNMRや円二色性(CD)、吸収スペクトルを用いて調べる。さらにチオウレア誘導体が導入された二重らせん分子を有機触媒に用いた不斉ストレッカー反応等を行い、二重らせん分子触媒の反応活性や不斉選択性について調べる。さらに、酸や塩基の添加など、化学的な環境に応答して不斉触媒能やキラル識別能の制御が可能かどうかについても検討する。最終的には、刺激に応答してらせん反転する系を構築し、不斉選択性の反転をも目指す。
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Research Products
(6 results)