2014 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日本における「先祖」観の社会的構築と国家政策の関係に関する宗教学的研究
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13J00524
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
問芝 志保 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 先祖祭祀 / 近代墓制 / 家族国家観 / 宗教概念 / 明治期札幌 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の〈先祖〉と〈墓〉概念・実践は、近代という時代において知識人層が時間をかけて整理・構築し、それがさらに中間的集団によって再構築され、またさらに社会通念として浸透、定着、自明化する過程のなかでも変容するという可変性、重層性が捉えられる。本研究は、先祖祭祀が日本近代という社会的文脈のなかでどのように構想され、現実化され、消費・受容され、現在に至るのかについて、いくつかのトピックを思想史や制度史、民衆史を横断した記述によって段階論的に明らかにすることで、日本の宗教状況の解明に貢献することを目指すものである。特に墓に関しては、地域ごとに固有の変容過程があったと考えられる。そこで採用第2年度では、明治期における近代的墓制の執行が既存の墓観念にもたらした変容について調査した。文献調査の結果、まず、日本国内においては明治初期、墓地をめぐる民俗的慣行は多様をきわめ、墓が祭祀の対象であるというのが必ずしも自明なことではなかったことが理解された。衛生や租税、都市計画・景観(外国人にどのように見られるか)、「信教の自由」化などといった、近代的課題の直接的な影響を受けて、近代的墓地は形成された。さらに法制のなかで墓は崇敬の対象、祭祀財産と規定されていき、最終的に墓を先祖で祀るという観念は自明化したことが理解される。さらに、明治期札幌の開拓民の墓をモデルケースに据え、文献資料と聞き取り調査によって分析した。開拓使が開拓民の定住を目的として墓地を形成し、特に明治20年代以降の都市化の進展とともに墓地の意味づけが拡大していく過程が理解された。この成果は日本宗教学会において口頭発表(2014年9月)、『宗教学・比較思想学論集』(2015年3月)へ論文として発表した。さらに近世墓制への考察を含めて発展させた内容を2015年6月の「宗教と社会」学会において口頭発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施予定だった研究について、資料収集・分析は当初の予定どおり進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き北海道札幌市の事例研究を行う。札幌市における資料収集及びフィールドワークを夏季に集中的に実施し、9月開催の日本宗教学会において口頭発表を行う予定である。
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Research Products
(4 results)