2013 Fiscal Year Annual Research Report
逆遺伝学的手法に基づく脊索動物ホヤの卵後極に局在する母性mRNAの局在機構の解明
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13J00554
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
飯塚 貴子 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カタユウレイボヤ / 局在母性mRNA / RNA結合タンパク質 / 母性ノックダウン系統 / Y-Boxタンパク質 |
Research Abstract |
初期発生における細胞分化や運命決定は母性因子による制御を受けている。そのため、母性因子機能の理解が初期発生機構の解明に必須である。私はカタユウレイボヤ卵において、将来の後方を形成する領域に特異的に局在する母性mRNAに着目し、その局在機構の解明を進めている。具体的には、母性mRNAを特異的にノックダウンするトランスジェニック系統(母性ノックダウン系統)作製の技術を利用して、母性mRNAの局在メカニズムを制御するRNA結合タンパク質の同定を進めている。 カタユウレイボヤのグノムデータベースおよびEST情報を利用し、卵で発現していると予想されるRNA結合タンパク質をコードする117種類の遺伝子をリストアップした。続いて他の生物とのホモログ等の情報から、母性mRNAの局在機構への関与の可能性の高い遺伝子を21種選別した。それらの遺伝子の母性発現をin situ hybridization法にて調べ、5種の遺伝子が受精卵で強い発現を示すことを明らかにした。これら5種の遺伝子のうち、4種についてノックダウン系統を作製している。更に、局在に関わる有力候補であるY-Boxタンパク質の母性ノックダウン系統を作製した。本系統の卵は受精後発生異常を起こした。その表現型は局在母性mRNAの1つCi-pemのノックダウン系統の表現型と酷似していたことから、Ci-pem mRNAの局在機構への関与が極めて高いことが示された。 母性mRNAの特異的ノックダウン法の最適化を目指し、母性mRNAの発現抑制メカニズムの解明を試みた。Ci-pemノックダウン系統とコントロール系統の卵でのsmall RNAの発現比較を行った結果、ノックダウン系統ではCi-pem遺伝子の5'UTR由来のアンチセンスsmall RNAの量が顕著に増加していた。このsmall RNAが転写もしくは転写後調節を起こす可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
母性mRNAの局在に関与していると推測される遺伝子6種の捜索に成功し、そのうちの5種では母性ノックダウン系統の作製に着手している。さらにY-box遺伝子のノックダウン系統の卵の表現型が、Ci-pem mRNAのノックダウンの表現型に酷似していることから、局在機構に関わる有力な候補の発見に成功していると考え、順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在作製中の4種のRNA結合タンパク質遺伝子のノックダウン系統を樹立し、それらの系統での表現型の確認とwhole mount in situ hybridization法による局在血RNA群の局在パターンへの影響を調べる。Y-Boxノックダウン系統の卵におけるCi-pem mRNAの局在パターンを調査する。更に、Ci-pemタンパク質の抗体を用いた抗体染色やWestern blottingにより、翻訳機構への影響を調査する。これらの母性ノックダウン系統の結果から、局在母性mRNAの局在機構への関与が明らかとなったタンパク質と局在mRNAや他のタンパク質との結合について、免疫沈降法とゲルシフト法にて検証することで、母性因子の局在機構の包括的な理解を目指す。
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Research Products
(1 results)