2013 Fiscal Year Annual Research Report
果実食を選んだ食肉目パームシベット-採食戦略の解明-
Project/Area Number |
13J00597
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中林 雅 京都大学, 野生動物研究センター, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボルネオ島 / 果実食者 / 食肉目 / 採食戦略 / 果実の選択 |
Research Abstract |
申請者は、ボルネオ島の熱帯雨林において、食肉目に属しながら果実を主食とするジャコウネコ科パームシベット類の採食戦略について研究を行っている。パームシベット類は、短い消化器官でも吸収が容易な一部の栄養素(例えば単糖類)のみを体内に取り入れ、それ以外の物質は速やかに体外へ排泄するという戦略をとっている、という考えに基づいて、前年度は野外調査と飼育個体を用いた実験を中心に、研究を行った。 野外調査では、採食パッチ内におけるパームシベット類の採食行動の観察を、他の果実食者と比較して行った。その結果、パームシベット類は、他の果実食者(マカク類、サイチョウ類)よりも統計的に有意に長く結実木上に滞在し、食べる果実の処理・選択に非常に時間をかけていることが明らかになった。こうした行動は、果実に含まれる特定の化学物質を探索または忌避していることを示すものである。すなわち、パームシベット類は果実食者としての形態面での不利を、時間をかけた果実選択と口腔内処理という消化効率を上昇させるための行動によって、補足していることを示すものであった。この成果は国際シンポジウムと国内学会で発表し、萌芽的な研究として高く評価された。 次に、パームシベット類がどういった要因に基づいて採食パッチ内で果実を選択するのかを調べるために、まず果実の糖度と酸度に着目し、パームシベット類3種の飼育個体を用いて果実選択性に関する実験をおこなった。その結果、パームシベット類3種の果実選択にはそれぞれ異なる要因が関与しており、パームシベットは酸度が低い果実を優先的に選択したことが明らかになった。このことは、、野外調査の結果と一致し、果実選択に時間をかけて、消化効率を上げていることが示唆された。今後別の分類群でも同様の実験を行い、比較をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、予定通りフィールド調査を中心に課題研究を行った。現在までに、発信機を装着したパームシベットの採餌場所を特定した。また、動物園にてパームシベットに果実選択・消化能力に関する実験を行った。これらの成果をまとめたものを、2013年度日本哺乳類学会で口頭発表した。これらはすべて昨年度の交付申請書に記載した研究の目的、実施計画に沿っている。したがって、現在までの本研究の達成度は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も昨年度に引き続き、残りのフィールド調査の遂行と、これまでに取得したサンプルの化学分析を中心に研究を進める。調査国からサンプルの持ち出し許可がまだ下りていないので、化学分析については調査国で行う必要がある。今後渡航し、速やかに分析を行う準備を進める。また、今年度中に、これまで得られた結果をまとめ、博士論文として提出する。
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Research Products
(6 results)